第421回 隣のヒットマン
平成十三年十一月(2001)
新橋 新橋文化
ブルース・ウィリスがクールな殺し屋を演じた『隣のヒットマン』は伏線の効いた緻密なコメディで、オチもよく痛快である。
歯科医のオズは底抜けのお人好しで、借金の山と悪妻ソフィに悩まされている。歯科医院の共同経営者だった妻の父がギャンブルで莫大な借金を残して自殺、それを背負い込まされ、シカゴにいられなくなって、今はカナダで細々と開業している。ソフィと姑はオズを働かせて、遊んで暮らしている。
ある日、隣に引っ越してきた男を見てオズは驚く。シカゴの伝説の殺し屋ジミー・チューリップだったのだ。
それを知ったソフィは、ジミーが親分を裏切り、五年の刑期を終えて出所し、今、マフィアから懸賞金がつけられていることを探り出し、オズにシカゴへ密告に行かせる。と同時に夫に多額の保険金をかけて、ジミーを雇おうとする。ジミーになんとなく友情を感じたオズは、シカゴからカナダに電話し、状況を説明して謝る。
これにハンガリアンマフィア、ジミーの妻のシンシア、オズの歯科医院助手で殺し屋に憧れるジル、マフィアの手先の巨漢フランキーが入り乱れ、二転三転の楽しい展開。顔色ひとつ変えず平気で人を殺す冷酷な殺し屋なのに、なぜか憎めないジミー・チューリップ、コメディ出身のブルース・ウィリスならではの持ち味が発揮される。
女優陣がみな魅力的。昔は可憐だったロザンナ・アークエットの中年になっての毒婦ぶりは見事。シンシアのナターシャ・ヘンストリッジは『スピーシーズ』のときからさらに美しくなって、ぞくぞくする。ジルのアマンダ・ピートは大胆なシーンを熱演。
それはそうと、カナダのハンバーガーにはマヨネーズが入っているらしく、マヨネーズ抜きを注文したのにやっぱり入っていて、怒り狂う場面が笑える。
オズ役のマシュー・ペリー、幕末に日本にやって来た黒船の司令官と同姓同名。たまたまだろうか。
隣のヒットマン/The Whole Nine Yards
2000 アメリカ/公開2001
監督:ジョナサン・リン
出演:ブルース・ウィリス、マシュー・ペリー、ロザンナ・アークエット、ケヴィン・ポラック、ナターシャ・ヘンストリッジ、アマンダ・ピート、マイケル・クラーク・ダンカン