第418回 バットマン リターンズ
平成四年八月(1992)
大阪 梅田 梅田東映パラス
ティム・バートン監督の『バットマン』に続く『バットマン リターンズ』は、さらにバートン色の強い遊び心満載で、乳母車ごと捨てられた赤ん坊が川をどこまでも流れていくオープニングから引き付けられる。
バートン監督の『バットマン』シリーズは残念ながら二作のみで、このあとに続く『バットマン フォーエバー』以後、私はどれもさほどいいと思わなかった。ジム・キャリーやシュワルツェネッガーは好きだが、彼らの演じる薄っぺらな悪役には全然魅力が感じられなかったし、ジョージ・クルーニーも好きだが、あのバットマンもどうかと思う。強いて言うならバートン以後、唯一よかったのは番外編のホアキン『ジョーカー』だろうか。
それはさておき、『バットマン リターンズ』には、コミック版の有名な悪役がふたり登場する。
ダニー・デビート演じるペンギン。生まれてすぐ、その醜さから両親に嫌われ、川に捨てられ下水で育ったが、悪のサーカス団を率いてゴッサムシティに現れ、市長に立候補する。
ミシェル・ファイファー演じるキャットウーマン。悪徳企業の社長秘書だったが、社長の悪事に気付いたため、ビルの窓から突き落とされ、生還して復讐鬼となる。
そして、このふたりに絡むもうひとりの悪役、金儲けのために不要な原子力発電を推進しようとする悪徳企業の社長がクリストファー・ウォーケン。
ティム・バートンが描くバットマンは一般の正義の味方のような単細胞ヒーローではない。大富豪と怪人の二つの顔を使い分けてはいるが、かなり屈折したものだ。両親の死というトラウマを抱えたバットマンは二重人格者であり、一歩間違えれば、ハイド氏になりかねない。犯罪者ペンギンやキャットウーマンにより近い立場にあるのだ。
マイケル・キートンが暗い影のあるバットマンを演じたのは、結局ティム・バートン監督の二作で終わる。その後、二十年の時を経て、俳優キートンは彼自身を当て書きにしたような『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』によって蘇る。
バットマン リターンズ/Batman Returns
1992 アメリカ/公開1992
監督:ティム・バートン
出演:マイケル・キートン、ダニー・デビート、ミシェル・ファイファー、クリストファー・ウォーケン