シネコラム

第416回 インクレディブル・ハルク

第416回 インクレディブル・ハルク

平成二十一年一月(2009)
新橋 新橋文化

 

 エドワード・ノートンウィリアム・ハートティム・ロス。文芸大作に主演しそうな渋い三人でマーベルコミック『超人ハルク』の映画化。
 米軍が極秘で開発中のスーパーソルジャー計画は兵士の肉体を改造し、無敵の戦士を生み出す試みだった。科学者ブルース・バナーが自ら実験台となり、事故でガンマ線を浴びて怪物化し、同僚で恋人のベティを負傷させ、周囲を破壊し、軍の施設から逃亡する。と、ここまでがオープニング映像、せりふなしで簡単に紹介される。
 本編が始まると、そこはブラジルの都会である。米軍から身を隠し、密かに治療法を研究するブルース。怒りや興奮の感情によって緑色の巨大な怪物に変身するので、腕に心拍計をつけ、心を平穏に保ちながら、飲料水の工場で労働者として働いている。
 が、ささいなことから、米軍に身元を探知され、スーパーソルジャー計画の責任者ロス将軍率いる特殊部隊に襲撃され、逃げ回るうち、怪物に変身し、町を破壊して逃亡する。
 部隊に参加した有能な兵士ブロンスキーはロス将軍から怪物ハルクの秘密を聞き出し、自らスーパーソルジャー計画の実験台となって、肉体を強化する。
 恋人ベティと再会し、大学の研究室に細胞学者サミュエル・スターンズを訪ね、その協力で中和に成功するブルースだったが、巨大な怪物となったブロンスキーが立ちはだかる。
 怪物化したブロンスキーとハルクが戦う場面は東宝の怪獣映画『フランケンシュタインの怪物 サンダ対ガイラ』を思わせる。
 ハルクに逃げられ、スーパーソルジャー計画に挫折したロス将軍が酒場で酔いしれていると、ひとりの男が現れる。強い戦士を作る方法、それは生身の肉体よりも鉄ですよ。
 アイアンマン、ハルク、マイティ・ソーキャプテン・アメリカスパイダーマン、次々と映画化が続くマーベルコミックのヒーローたち。彼らがやがて集結するスペースオペラの前触れである。

 

インクレディブル・ハルク/The Incredible Hulk
2008 アメリカ/公開2008
監督:ルイ・リテリエ
出演:エドワード・ノートンリヴ・タイラーティム・ロスウィリアム・ハート、ティム・ブレイク・ネルソン