シネコラム

第408回 プリシラ

第408回 プリシラ

平成八年一月(1996)
池袋 文芸坐

 

 ドラッグクイーンが主人公の映画といえば、やはり真っ先に思い浮かぶがのが三人組がオーストラリアの砂漠を行く『プリシラ』である。
 渋い初老の敵役テレンス・スタンプが演じる女装の麗人を目にするだけでも価値のある佳作。あとのふたりも、この映画の後、『マトリックス』の悪役や『ロード・オブ・ザ・リング』の妖精王で名をあげるヒューゴ・ウィーヴィングと、やはりこの映画の後に『L.A.コンフィデンシャル』の警官役で有名になるガイ・ピアース。この三人がゲイの役、今思うとすごいキャスティングである。
 中でもテレンス・スタンプは品のいいクイーンぶりで、立ち居振る舞いは往年の美人スターを思わせる。
 最初の場面。自由に生きる女性の心情を歌った『愛はかげろうのように』の曲、口だけぱくぱくで歌っているように見せる厚化粧のヒューゴ・ウィービング。このステージのシーンで思わず引き込まれる。
 オーストラリアの都会でゲイバーに出演している三人のドラッグクイーン。恋人に死なれて失意の初老バーナデット、妻も子もある中年ミッチ、筋肉質の若いフェリシア
 この三人が地方のホテルのショーに出演するため、チャーターしたバスで砂漠を越える。バスにつけられた名前がプリシラ号。
 途中で立ち寄る田舎町では、どこも蔑視と好奇心の入り交じった差別ばかり。タフで図々しいつもりの目立ちたがり三人組も、やはり傷つく。
 妻子と再会し、息子と心を通わすミッチ。旅先で新しい恋を見つけるバーナデット。コメディだが、ゲイを茶化した悪ふざけではなく、心温まる人間ドラマになっている。
 それにしてもこの三人が歌に合わせて踊る場面のなんと楽しいことか。

 

プリシラ/The Adventures of Priscilla, Queen of the Desert
1994 オーストラリア/公開1995
監督:ステファン・エリオット
出演:テレンス・スタンプヒューゴ・ウィーヴィングガイ・ピアース、ビル・ハンター、サラ・チャドウィック、マーク・ホルムズ、ジュリア・コルテス、ケン・ラドレイ

 

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