第407回 ステージ・マザー
令和三年三月(2021)
日比谷 TOHOシネマズシャンテ
コロナ禍でハリウッド大作がほとんど映画館で上映されない状況が続く。逆に、今は地味な佳作を映画館で観ることのできるチャンスかもしれない。そんな一本がカナダ映画の『ステージ・マザー』である。
テキサスの田舎町に住む初老のメイベリンはごく普通の専業主婦で、地元の教会の聖歌隊の指揮を受け持っていた。そこへ突然、息子リッキーの死の知らせが届く。リッキーは若い頃に父親と対立して家を捨て、音信不通となっていたのだ。
死んだ息子をなおも嫌い続ける夫の反対を押し切って、メイベリンはひとりサンフランシスコで執り行われる葬儀に向かう。
教会に集う女装の男たち。葬儀はさながらゲイバーのショウタイムのようだった。思わず飛び出してしまうメイベリン。
リッキーはゲイだった。夫はそれが許せず、メイベリンは息子を愛してはいたが、やはり認めたくなかった。そのためにリッキーはサンフランシスコでゲイバーの経営者となっても、死ぬまで両親と会うことはなかった。
息子の死によってゲイバーを相続したメイベリンは、息子の恋人で店のパートナーでもあったネイサンに敵視されながらも、聖歌隊で培った指導力でドラッグクイーンたちの魅力を引き出し、落ち目のゲイバーを人気スポットとして成功させる。が、結局は店をネイサンに譲ってテキサスの田舎に帰って行く。
なにか、似たような話があったな。
ジェームズ・スチュアート主演のコメディ西部劇『テキサス魂』を思い出した。
テキサスの野暮なカウボーイが双子の兄の死で、町の売春宿を相続する。そこでいろいろと事件があって、最後には店を娼婦たちに譲り、テキサスに戻るという話。どちらもテキサスつながり。関係ないかな。
ステージ・マザー/Stage Mother
2020 カナダ/公開2021
監督:トム・フィッツジェラルド
出演:ジャッキー・ウィーバー、ルーシー・リュー、エイドリアン・グレニアー、マイア・テイラー、アリスター・マクドナルド、オスカー・モレノ、ジャッキー・ビート