シネコラム

第405回 キンキーブーツ

第405回 キンキーブーツ

平成十九年一月(2007)
飯田橋 ギンレイホール

 

 英語のKinkyには性的変態という意味があるそうで、近畿大学は英語表記「KINIKI UNIVERSITY」を「KINDAI UNIVERSITY」に改めたとのこと。
 二〇〇五年製作の映画『キンキーブーツ』は二〇一三年にブロードウェイミュージカルとなって大ヒットし、二〇一六年には三浦春馬など日本人キャストによる舞台が上演され、さらにロンドンキャストでのライブ版が二〇二一年に劇場上映された。
 近畿大学の英語表記変更は、おそらくこのブロードウェイ発ミュージカルのロングランと世界的ヒットによるものと思われる。
 オリジナルの映画は実話をもとにしたコメディで、イギリスの田舎町が舞台。
 老舗の靴工場の社長が亡くなり、憧れのロンドン暮らしを始めたばかりの息子チャーリーが戻って来て、心ならずも会社を引き継ぐ。が、紳士靴は全然売れず、赤字続きで会社は倒産寸前だった。
 在庫処分の商談にロンドンを訪れたチャーリーが酔っぱらって偶然に出会ったのが、大柄な黒人の人気ドラッグクイーン、ローラ。ステージで歌い踊るのに、女性用のハイヒールはすぐに踵が折れてしまうとこぼす。
 そこでチャーリーはひらめく。ローラをデザイナーに起用し、女装男性専用の頑丈でしかもおもいきりセクシーなハイヒールのブーツを作ろうと。
 従業員の反発、ゲイに対する偏見、婚約者との不和などの試練を乗り越え、はたして男性用ハイヒールブーツは完成するのか。
 オリジナル版でローラを演じたキウェテル・イジョフォーは、どう見てもこの役にぴったりだったが、『堕天使のパスポート』ではアフリカから亡命した正義感の強い不遇の黒人医師、『それでも夜は明ける』では南部の奴隷農場に売られるミュージシャン、『ライオンキング』では声優、マラウイを舞台にした『風をつかまえた少年』では監督兼主人公の父親役。コメディ、SF、アクション、アニメ、社会派となんでもこなす才人である。

 

キンキーブーツ/Kinky Boots
2005 イギリス・アメリカ/公開2006
監督:ジュリアン・ジャロルド
出演: ジョエル・エドガートンキウェテル・イジョフォー、サラ=ジェーン・ポッツ、ジェミマ・ルーパー、リンダ・バセット、ニック・フロスト、ロバート・ピュー

 

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