シネコラム

第402回 まぼろしの市街戦

第402回 まぼろしの市街戦

 

昭和五十三年四月(1978)

大阪 中之島 SABホール

 

『マラー/サド』と二本立てで観たのが『まぼろしの市街戦』だった。どちらも精神病院が題材になっている。こんな組み合わせを考える上映会の主催者、よほどの映画好きなのだろう。

 第一次大戦中のフランスの小さな村。占拠していたドイツ軍が撤退する際、巨大な時限爆弾を仕掛ける。間もなく進攻してくるであろう英軍を村ごと吹き飛ばすために。村人はすべて逃げ去り、精神病院の患者と巡業中だったサーカスの動物だけが取り残される。

 だれもいなくなった村で、病院から抜け出した患者たちはそこらじゅうの店に勝手に入り込み、好きな衣装に着替えて、それぞれが侯爵や将軍や娼館のマダムなどになりきって遊んでいる。

 いち早くレジスタンスから爆弾の情報をつかんだ英軍は、爆弾解除を若い通信兵チャールズに命じる。伝書鳩とともに村に単身乗り込んだチャールズを患者たちは王様に仕立てて、歓迎する。爆弾の場所を知るレジスタンスはドイツ兵に射殺されたあとで、爆破の刻限はだんだんと迫る。

 患者のひとりである綱渡りの踊り子コクリコとチャールズは仲良くなり、患者たちによる結婚パーティが繰り広げられる。

 そんな中、チャールズは間一髪で爆弾を発見し、危機を救って、英軍を呼び寄せる。英軍の一隊は患者たちを本物の侯爵や将軍と思い込み、いっしょになってお祭り騒ぎ。

 が、最後には英独の合戦で殺し合う。患者たちは遊びは終わったとばかり、病院へと帰っていく。戦争の狂気よりは精神病院の患者たちがよほどまともという皮肉な結末。

 撤退するドイツ兵のひとり、ちょび髭の男がアドルフと呼ばれていて、演じたのが監督のフィリップ・ド・ブロカ本人だった。

 

まぼろしの市街戦/Le Roi de Cœur

1966 フランス/公開1967

監督:フィリップ・ド・ブロカ

出演:アラン・ベイツジュヌヴィエーヴ・ビジョルドジャン=クロード・ブリアリ、フランソワーズ・クリストフ、ピエール・ブラッスールジュリアン・ギオマール、ミシェル・セロー、ミシュリーヌ・プレール