シネコラム

第370回 アウトブレイク

飯島一次の『映画に溺れて』

第370回 アウトブレイク

平成七年九月(1995)
池袋 文芸坐

 

 未知の伝染病が広がって、人がばたばたと死んでいく。という映画はいくつかある。マイケル・クライトン原作の『アンドロメダ…』は宇宙から帰還したカプセルに付着していた病原体があっという間にアメリカの田舎町を死の世界に変えるというものだった。
 ダスティン・ホフマン主演の『アウトブレイク』もリアルで怖い。
 アフリカで恐ろしい伝染病が発生し、ひとつの村が全滅する。未経験の若い医者が現地でのあまりにひどい現状に吐き気を催すが、防疫服を着ているために吐けない。それでも服を脱いで吐いてしまうファーストシーン。
 その地域で捕獲された猿がアメリカに密輸入され、ある町のペットショップで売られるのだが、その直後から、死の病が町を襲う。
 悪性の伝染病が進化し、空気感染の特徴が加わり、あっという間に広がるのだ。映画館で咳をするカップルがいて、たちまち集団感染。軍隊が町を鉄条網で囲み、他の地域への感染を防ぐため、銃を持った兵士が住民をひとりも外へ出さないよう監視する。発症したら家族から引き離されて、軍の車で隔離場所へ。そこからはだれも生きて帰れない。
 ダスティン・ホフマンふんする軍の予防医の大佐と、彼と離婚して民間の防疫施設に勤める元妻。二人が喧嘩したり協力したりしながら、この伝染病に取り組む。
 大佐の同僚で優秀で論理的な軍医が大量の感染者を不眠不休で治療する途中、疲れ切ってうっかりと自分の防疫服に瑕をつけ、空気感染してしまう場面。ああ、こんなこともあるだろう。この軍医を演じたのがケビン・スペイシーだった。今いずこ。
 細菌兵器への利用を考える悪役の将軍がドナルド・サザーランド
 シリアスな設定でかなりリアリティもあるのだが、最後は免疫のある猿を捕まえて血清を作り、病気が治まるなど、御都合主義も目立つ。現実は残念ながら、映画のようにはうまくいかない。

 

アウトブレイク/Outbreak
1995 アメリカ/公開1995
監督:ウォルフガング・ペーターゼン
出演:ダスティン・ホフマンレネ・ルッソモーガン・フリーマンケビン・スペイシーキューバ・グッディング・Jrドナルド・サザーランドパトリック・デンプシー

 

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