シネコラム

第362回 スティング

第362回 スティング

昭和四十九年七月(1974)
大阪 曽根崎 梅田グランド

 

 詐欺師の映画というのは、主人公の詐欺師がカモを引っ掛けるトリックの面白さもあるが、実はもうひとつ、映画を観ている観客そのものも騙してしまう手口。わあ騙された、という快感を与えてくれる二重の楽しさがあるのだ。
 私が一番最初に騙されたのは『テキサスの五人の仲間』で、開拓時代の西部を舞台にしたもの。実はこの映画はTVの日曜洋画劇場で観て、大人になってからDVDで観ただけなので、このブログでは詳しい紹介はしない。ただし、未見の人は決してインターネットなどのあらすじを読まないように。
 詐欺師の映画もいろいろあるが、私はなんといっても『スティング』が一番好きだ。ロバート・レッドフォードの若造ジョニーが、相棒のルーサーと路上でカモを引っ掛けて大金をせしめる。それがギャングの賭博のあがりだったため、ロバート・ショーふんする大親分ロネガンの怒りにふれ、ルーサーは無残に殺さる。
 ジョニーはルーサーの親友ヘンリーを頼ってシカゴに逃亡。この詐欺の名人ヘンリーがポール・ニューマン。かつての詐欺師仲間を集め、ギャング相手にルーサーの敵討ち。
 その方法というのが競馬を利用した大掛かりな詐欺なのだ。時代背景は禁酒法時代のアメリカで、アンタッチャブルの世界。詐欺師とギャングの対決にジョニーを追う刑事や殺し屋やFBIが絡む。
 禁酒法時代のギャング映画というのは、歴史の浅いアメリカでは西部劇同様の一種の時代劇なのだろう。
 ポール・ニューマンロバート・レッドフォード、それに監督のジョージ・ロイ・ヒルは、この映画の前に『明日に向かって撃て』を作っており、そっちを先に観た人は『スティング』にはさらに騙されやすい仕掛けになっている。

 

スティング/The Sting
1973 アメリカ/公開1974
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
出演:ポール・ニューマンロバート・レッドフォードロバート・ショウチャールズ・ダーニング、レイ・ウォルストン、アイリーン・ブレナン、ロバート・アール・ジョーンズ