シネコラム

第358回 怖がる人々

第358回 怖がる人々

平成二十四年一月(2012)
池袋 新文芸坐

 和田誠が監督した恐怖短編五話のオムニバス映画。
「箱の中」深夜に酔って帰宅したサラリーマンが、マンションのエレベーターで偶然に知らない女といっしょになる。と、エレベーターが故障で止まってしまう。閉じ込められた二人、どうなるのかと思っていたら、この女、美人なのにやたら怖いことを言い始める。都会のマンションに住んでいると、こういうこと、ないとはいえない。
吉備津の釜」失業中の女性、父親が病気で倒れたために、なんとか働きたいと思っているが、なかなか仕事が見つからず、困っているときに、酒場で見知らぬ女性から声を掛けられる。あなたが気に入ったので、親切な友達がいるから紹介しよう。その人なら必ず就職を世話してくれるはずだと。見知らぬ他人の親切には要注意。
「乗越駅の刑罰」田舎の駅の改札、だれもいないので通り過ぎようとした乗客を駅員が呼び止め、乗客は切符を持っていなかった。そこで。
「火焔つつじ」平山蘆江の怪談集にあった生霊の話。
「五郎八航空」無人島に取材に出かけて嵐に遭う雑誌記者とカメラマン。そこに現れる個人タクシーならぬ個人飛行機。操縦士が蝮に噛まれたとかで、操縦しているのは慣れないおかみさん。急いで本社に戻りたくて、この飛行機に乗る記者とカメラマンの恐怖。
 五作全体を通じて、ストーリーもさることながら、俳優の演技が充実している。これだけの名優と個性派が出ているのだから、当然ではあるが。さすがに和田誠はすごい。

 

怖がる人々
1994
監督:和田誠
出演:真田広之原田美枝子佐野史郎熊谷真実杉本哲太清水ミチコ筒井康隆、でんでん、逗子とんぼ島田歌穂奥村公延平田満上田耕一麿赤児マルセ太郎佐々木すみ江高品格、内田朝雄、フランキー堺斎藤晴彦萩原流行花王おさむ、杉山とく子、小林のり一、浅香光代、渡辺哲、小林薫黒木瞳三谷昇石黒賢嶋田久作レオナルド熊桜金造山谷初男不破万作、すまけい、唐沢寿明渡辺えり