シネコラム

第349回 バーブワイヤー/ブロンド美女戦記

第349回 バーブワイヤー/ブロンド美女戦記

平成九年二月(1997)
池袋 文芸坐

 

 アメリカ合衆国軍事独裁化した近未来。ただひとつ自由のはびこる悪の都市があった。まるで『ニューヨーク1997』のマンハッタンとそっくりな設定。
 この悪の町で酒場を開く女主人がバーブ・ワイヤー。悪徳署長ともちつもたれつの関係。ここに合衆国から女性科学者とその夫のレジスタンスの闘士が逃亡してくる。
 女性科学者は細菌兵器の解毒化学式を持っているため追われている。官憲の目をくらましカナダへ逃げるには疑似網膜コンタクトレンズが必要。バーブがレンズを持つことを知り、科学者の夫が酒場に訪ねてくる。これが昔、彼女の前から突然姿を消した恋人だった。
 どこかで観たようなストーリーだな、と思った。
 時代が近未来ではなく一九四〇年代、場所がアメリカではなくモロッコ、酒場の主人がかつての恋人のためにその夫を国外に逃がしてやる物語。疑似網膜コンタクトレンズはパスポート。バーブ・ワイヤーはハンフリー・ボガート
 そのまま『カサブランカ』だったのだ。
 B級ながら、ブロンド美女の近未来SFアクション、オリジナルの設定を上手に取り入れていて、私はけっこう好きな映画である。
 第十七回ゴールデンラズベリー賞の最低作品賞にノミネートされるも、デミ・ムーアの『素顔のままで』に惜しくも敗れる。が、主演の元プレイメイトパメラ・アンダーソンは最低新人賞に輝いた。

 

バーブワイヤー/ブロンド美女戦記/Barb Wire
1996 アメリカ/公開1997
監督:デヴィッド・ホーガン
出演:パメラ・アンダーソン、テムエラ・モリソン、ウド・キア、ヴィクトリア・ローウェル、クリント・ハワード、スティーヴ・レイルズバック、ザンダー・バークレー