シネコラム

第343回 TIME/タイム

第343回 TIME/タイム

平成二十三年十二月(2011)
六本木 20世紀フォックス試写室

 

 ユートピアの反対がディストピア。経済破綻と貧富の格差、環境破壊や核戦争による荒廃、人類増加による食料危機、コンピュータによる人間の管理、悲惨な未来を描いたSF作品は数多い。もはや人類に明るい未来はあるのだろうか。
 時は金なりということわざ、アメリカ映画『TIME/タイム』はそれをそのまま実現した未来である。
 遺伝子工学の進歩により、人は年を取らなくなる。二十五歳になると、成長も老化もストップ。そして腕に数字が浮かぶ。残りの寿命があと何年何月何時間何分何秒とまで。数字がゼロになると、命がなくなり、ばたっと倒れておしまい。
 この未来世界には金は存在せず、腕の数字が通貨になっている。庶民は一日働き、報酬として時間をもらう。買い物をしたり、バスに乗ったりすると、その分、腕の数字で支払うのだ。コーヒー一杯が四分とか、バス代が一時間とか。
 冒頭、アパートに住む若い男女、男が女に向って言う。お誕生日おめでとう、ママ。二十五回目の二十五歳だね。この若くて美人のお母さん、なんと五十歳という設定。外見が二十五歳以上の人がいない世界なのだ。
 主人公ウィルは庶民階級、毎日あくせく工場で働き、時間に追われる生活。母親が時間切れで目の前で死亡。
 一方富裕層のところには、世界中から時間が集まってくるので、事実上の不老不死、不慮の事故にでも遭わないかぎり、永遠に遊んで暮らしている。
 偶然に長時間を手に入れたウィルは、富裕層地区に乗り込み、この不公平な時間システムの秘密を知ることになる。まるでマイケル・ムーアが『キャピタリズム』で描いた歪んだ資本主義社会である。
 時間に追われて生きるのもつらいが、永遠に生きるとなると、それもまた大変だ。

 

TIME/タイム/In Time
2011 アメリカ/公開2012
監督:アンドリュー・ニコル
出演:ジャスティン・ティンバーレイクアマンダ・サイフリッドキリアン・マーフィー、オリヴィア・ワイルドマット・ボマーアレックス・ペティファー

 

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