第341回 カイジ ファイナルゲーム
令和二年一月(2020)
新所沢 レッツシネパーク
暗い未来である。東京オリンピックのお祭り騒ぎが終わると、日本を大不況が襲う。物価は上昇し、町には失業者やホームレスが溢れる。貧富の格差は極度に広がり、ごく一部の政治家と財界人だけが巨万の富を独占する。政治家は税金を引き上げ、福祉を切り捨て、私腹を肥やす。実業家は一般庶民をクズと呼び、搾取してますます膨れ上がる。私利私欲しか頭にない上層の少数者と、生活苦にあえぐ大多数の国民。今の日本の現実を重ねて誇張したような悪夢の世界である。
第一作の『カイジ』では、友人の保証人になったために借金を負わされ、返済のために賭博ゲームをすすめられ、結局地下で強制労働。抜け出すための死のゲーム。高層ビルに渡された鉄骨の細い橋を渡れば大金。落ちれば死。それを高みから見物して喜ぶ金持ちたち。
第二作の『カイジ2』では賭博グループの巨大パチンコに挑戦。
そしていよいよ第三作のファイナルゲーム。政府の陰謀を阻止するため、カイジは死期の迫った大富豪に依頼されて、財界トップの悪徳派遣会社社長との天秤ゲームに挑戦する。制限時間内にそれぞれの受け皿に積み上げられた金額の重いほうが勝ち、負けた側はすべてを失う。悪徳社長は政府と手を結び様々な汚い手を使う。不利な大富豪の金を増やすためにカイジがさらに挑むのが究極の自殺ジャンプ。プレイヤーが選んだ十本のロープのうち一本だけが助かり、あとは落下して惨死。それを政界財界の金持ちたちが競馬を楽しむように金を賭けて眺めるのである。
過去二作同様に今回もカイジが最後に勝つとはわかっていても、やはり手に汗握ってしまうのだ。
私はパチンコも麻雀もポーカーもギャンブルはいっさいやらない人間だが、ギャンブルの映画は面白い。政界財界で大物面しているゲスたちが、一文無しになって自分がクズよばわりしていた底辺に落ちるのは痛快だが、こんな日本の未来は絶対にいやなのである。
カイジ ファイナルゲーム
2020
監督:佐藤東弥
出演:藤原竜也、福士蒼汰、関水渚、新田真剣佑、吉田鋼太郎、松尾スズキ、生瀬勝久、天海祐希、金田明夫、伊武雅刀