シネコラム

第324回 夕陽のガンマン

第324回 夕陽のガンマン

平成二十一年七月(2009)
京橋 フィルムセンター

ぴあフィルムフェスティバル」のイーストウッド特集で鑑賞。『夕陽のガンマン』は昔、TVの洋画劇場で一度観ただけだった。
 荒野を馬で行く男が、かなりのロングで映り、やがて銃声、馬から落ちる男。そしてエンニオ・モリコーネの有名な主題歌。
 マカロニウエスタンにはアメリカの西部劇とは違う形の独特の様式美がある。臭いほどに主人公を目立たせる。音楽で盛り上げる。アクションの見せ場。暴力とお色気。これは当時の日本の時代劇にも大いに影響を与えた。
 ポンチョをまとった流れ者の賞金稼ぎ。イーストウッドの独特のスタイルは前作『荒野の用心棒』と次回作『続・夕陽のガンマン』でもそのまま同じだが、ストーリーは関連していない。
 黒づくめのガンマン、賞金稼ぎの大佐を演じるリー・ヴァン・クリーフ。その後、マカロニウエスタンに出続けてスターとなるが、デビュー作は『真昼の決闘』の無法者のひとりだった。マカロニで主演の後、『荒野の七人』のリメイク『荒野の七人 真昼の決闘』で七人のリーダー格も演じている。
 メキシコ人盗賊団の首領がジャン・マリア・ボロンテ。悪役が凄味があると、たいていは成功する。ジャン・マリア・ボロンテはイタリアの名優で、『死刑台のメロディ』や『殺人捜査』『黒い砂漠』など社会派ドラマにも主演作があり、私は好きだった。
 イーストウッドはもとより、ニヒルリー・ヴァン・クリーフも野獣のようなジャン・マリア・ボロンテも三人とも絵になるのだ。
 ふたりの賞金稼ぎが協力しあったり、裏切ったりしながら、凶悪な盗賊一味を退治するストーリーだが、アメリカ西部劇のような正義のヒーローは出てこない。

夕陽のガンマン/Per qualche dollaro in più
1965 イタリア/公開1967
監督:セルジオ・レオーネ
出演:クリント・イーストウッドリー・ヴァン・クリーフ、ジャン・マリア・ボロンテ、クラウス・キンスキー