シネコラム

第289回 エクストリーム・ジョブ

第289回 エクストリーム・ジョブ

令和元年十月(2019)
渋谷 ショウゲート試写室

 麻薬捜査課精鋭チームの五人組。精鋭というよりは、ついやりすぎて、署内でも浮いてしまう五人。
 麻薬組織のアジト情報が入る。たまたまアジトの向かいにチキン唐揚げ店があったので、連日入り浸って張り込みを続けるが、店主から言われる。贔屓にしてくれてうれしいけど、赤字続きなので店を閉めると。思えば、毎日お客は五人の捜査官だけ、他にはだれも来ない店なのだ。
 うーん、張り込みに好都合の場所はここしかない。そこで、班長が身銭を切って店を買い取り偽装営業。だが、アジトの組員が店に来ることもある。全然商売していないのでは怪しまれる。五人で唐揚げ屋を再開。捜査官のひとりが揚げたカルビ味チキン。これがなかなかの味。店に出すと、あまりのおいしさにお客が大満足。口コミやネットで評判が広がり、あっという間に行列のできる店になってしまう。
 そうなるともう、本末転倒。張り込みそっちのけで、朝から晩まで一日中、チキンを揚げ続ける捜査官たち。
 大繁盛なので、けっこう売り上げはよく、警察の給料よりも大金が入ってくる。が、こんなことで、麻薬組織を一網打尽にできるのだろうか。
 犯人に刺されても撃たれても必ず回復するゾンビの異名の班長をはじめ、チームのひとりひとりに特技あり。
 この映画を観て思い出したのがウディ・アレンの『おいしい生活
 銀行強盗を企てた一味が、銀行と道路を隔てた店を買い取り、その地下から道路を掘り進み銀行の地下へたどろうとする。まるでシャーロック・ホームズの有名な一話のような設定だが、偽装で開いたクッキー店が大繁盛で、全国チェーンの大企業になってしまうという展開だった。

エクストリーム・ジョブ/극한직업
2019 韓国/公開2020
監督:イ・ビョンホン
出演:リュ・スンリョン、イ・ハニ、チン・ソンギュ、イ・ドンフィ、コンミョン