明治一五一年 第7回
森川雅美
私たち放たれいく世界は
澄んだ水だから
どこからか足音が
進んでいき幾つもの傷
は開く横側からの人たちの
眼は見えなく
様ざまな場所に
残される泥濘に迷いつつ
哀しみも東西南北から
雪崩れこみ糾われ
暗くなる日日の営みが
滲んでいくまでの
いく人もの人たちが横たわり
低くい声で呻いていました
始まりはいつだって
見えないまま結ぶと
私たち放たれいく
世界は澄んだ水だから
求める間もなく
多くの小さな綻びを掲げ
閉じた記録の狭間に埋もれる
ひとつの屑
として沈む数知れぬ人の
意識を紡ぎつつ
行方の分からない
片言の思いすら曇らす
自分はまだ生きていますが
救えなかった人は忘れられず
はるか彼方で失われた
細い先端を結わく
顧みられず忘れられた
流れの内側にこそ
綴られる人の生きた息の
起伏を辿りつつ
私たち放たれいく世界は
澄んだ水だから
縺れていく足裏の
感触は地に散らばる数
なれどあふれ出す新しい
水脈の底を撫ぜ