シネコラム

第247回 小さな巨人

第247回 小さな巨人

昭和五十年七月(1975)
大阪 中之島 SABホール

 一九六〇年代末から七〇年代初期、マカロニウエスタンは別にしても、アメリカの西部劇にけっこう異色作が多かったように思う。反体制的なニューシネマの風潮も強く、タカ派ジョン・ウェインが悪者のインディアンをバンバン撃ち殺す時代は終わっていた。ベトナム戦争当時、米軍による無差別殺戮を西部劇に置き換えたのが『ソルジャーブルー』で、騎兵隊が女子供だけの村を襲って殺戮強姦を繰り広げ、大勝利宣言するという悪夢のような作品、後味が悪かった。
 そこへいくと、同じインディアンを描いていても、ダスティン・ホフマン主演の『小さな巨人』は適度なユーモアもあり好感がもてる。
 開拓民の一家がインディアンに襲われ、白人の幼い少年が部族に連れて行かれてインディアンとして育つ。
 肌の色が違うので周囲からは馬鹿にされるが、小柄で勇気があり「小さな巨人」の名をもらう。やがて騎兵隊との戦闘の最中、彼が白人であることがわかり、白人社会に戻る。ならず者のワイルド・ビル・ヒコックと親しくなったり、生き別れの姉と再会してガンマンとして腕を磨いたりするが、再びインディアン社会に戻って、今度は部族の女性と結婚し、しあわせな家庭を作る。
 ところが、彼の留守中にカスター将軍率いる第七騎兵隊が村を襲い、妻子は無残に殺される。絶望の後に放浪し、次に彼が選んだ道は第七騎兵隊のガイドだった。この世からインディアンを完全に撲滅しようとするカスター将軍の狂気はヒトラーに重なる。
 第七騎兵隊全滅の陰には、部隊を不利な位置に導いた無名のガイドの存在があったという話。百歳を越える老人が歴史家のインタビューに応えて語る波瀾万丈の物語、これもまた、一種のアメリカ流ほら話であろう。

 

小さな巨人/Little Big Man
1971 アメリカ/公開1971
監督:アーサー・ペン
出演:ダスティン・ホフマンフェイ・ダナウェイ、マーチン・バルサ

 

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