シネコラム

第233回 トールキン

第233回 トールキン

令和元年六月(2019)
六本木 20世紀フォックス試写室

 うちの子供が幼い頃、ピーター・ジャクソン監督の『ロード・オブ・ザ・リング』三部作を、公開のたびに観に行った。けっこう怖い場面もあったが、子供たちは喜んでいた。映画館で『ロード・オブ・ザ・リング』を観て、家に帰ったら、その日にTVで『マトリックス』が放映されていて、あ、おんなじ人が出ている、と子供が言ったのが印象深い。同じ人とはヒューゴ・ウィーヴィングである。
 それはともかく、『指輪物語』の作者、トールキンはどんな人だったのか。
 第一次世界大戦中のフランス最前線。飛び交う砲弾、流れる毒ガス、ドイツ軍の火炎放射。英国陸軍のトールキン少尉は塹壕の片隅で熱にうかされながら、走馬灯のごとく過去を回想する。
 南アフリカで父が亡くなり、母と弟と三人で英国バーミンガムへ。そこで母も亡くなったので、孤児となり、弟とともに裕福な家庭に寄宿する。勉学が優秀で名門校へ入学し、そこで親友となる三人の少年に出会う。四人でクラブを結成し、カフェで文学や芸術を語り合う。寄宿先で同じく孤児のエディスと恋に落ち、ピアニスト志望でワーグナー好きの彼女を誘って劇場へ行くも、安い桟敷席は売り切れており、高い席には入れず、悔し紛れにふたりで楽屋に忍び込み、裏からそっと聴いたのが『ニーベルングの指輪』だった。
 神父にエディスとの恋を禁じられ、諦めてオックスフォードへ進学。そこで言語学の才能を発揮し、古代語の権威である教授に認められて、奨学金を得る。が、戦争に突入、それぞれオックスフォードとケンブリッジに別れて進学していた親友とともに戦地へ。
 友を失い、負傷して帰国した彼を待っていたのが、エディスだった。
 友情と冒険と魔法を描いたファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・リング』や『ホビットの冒険』の原作者として有名なトールキン。その若き日が丹念に描かれている。

トールキン/Tolkien
2019 アメリカ/公開2019
監督:ドメ・カルコスキ
出演:ニコラス・ホルト、リリー・コリンズ、コルム・ミーニー、アンソニー・ボイル、パトリック・ギブソントム・グリン=カーニーデレク・ジャコビ

 

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