シネコラム

第219回 クライム&ダイヤモンド

第219回 クライム&ダイヤモンド

平成十五年一月(2003)
新橋 新橋文化

 映画マニアの殺し屋が主人公という趣向を凝らした犯罪コメディ。
 がらがらのさびれた映画館で一心にスクリーンを見つめる毒舌ジム。上映されているのは『ティファニーで朝食を』のラストシーン。最初から映画ネタで始まる。
 凄腕の殺し屋ジムは組織の依頼で若い詐欺師フィンチを縛り上げ銃をつきつけている。が、報酬がまだ口座に振り込まれていない。そこで、振り込まれるまでの間、フィンチに映画の話をする。
 昔の映画はよかったなあ。今のは爆発ばっかりで、安直だ。
 映画、好きなんですか。
 ああ、おまえも好きか。なんか話をしてみろ。面白ければ、命が延びるぞ。
 そこで、フィンチはアラビアンナイトのシェラザード姫のように語り始め、物語が始まる。
 時代は一九七〇年代。
 フィンチがそう言うと、毒舌ジムは頷いて、回想はいいねえ。慣れない客はとまどうけど。俺、好きだな、回想シーン。すぐに口をはさむ。
 七〇年代にダイヤモンドが盗まれる。詐欺師のフィンチは刑務所で宝石強盗のトバイアスと知り合い、ふたりで脱走する。警察の死体置き場に勤めている男の世話で、フィンチは別人になるのだが、これがギャングの殺人現場を目撃して焼き殺された証人だった。ギャングはフィンチが現れたので、目撃者がまだ生きていたと驚き、その始末を殺し屋のジムに依頼したのだ。これにダイヤの行方やトバイアスの娘とフィンチのロマンスも絡んで、全編、有名な映画の名せりふや名場面が散りばめられ、宝石箱をひっくりかえしたよう。さて、フィンチの運命はどうなるのか。
 ラストシーン、どしゃぶりの雨の中を歌って踊りながら去る毒舌ジム。彼が歌うのはもちろんあの曲、ジーン・ケリーの。

 

クライム&ダイヤモンド/Who Is Cletis Tout?
2000 アメリカ/公開2002
監督:クリス・ヴァーウェル
出演:クリスチャン・スレーターティム・アレンリチャード・ドレイファス、ポーシャ・デ・ロッシ