シネコラム

第206回 東京うんこ

第206回 東京うんこ

平成二十三年七月(2011)
新宿 K‘sシネマ

 

 奇抜なタイトルの場合、タイトルだけで観たくなる場合と、観たくなくなる場合があって、私はこの映画『東京うんこ』はそれだけで大変興味を持った。
 東京は高円寺のアパートに住む若い同棲カップル。女は大阪出身なのか、ずっと関西弁である。男はある日突然、会社を辞めて漫画家になる決意をし、好きなプロレスを題材にしたギャグ漫画を完成させて、雑誌社のコンテストに投稿する。大言壮語するが結局は落選。とたんに漫画への熱も冷めてしまう。
 一度落選したぐらいで何よ。さあ、頑張って描きなさい。
 彼女にそう言われると、漫画なんか、どうせプロがお金もらって、締め切りに追われながら描いていればいいんだ。俺は所詮、アマチュアよ。そして、彼は古いプリンを食べて腹くだし。
 そんなウンコのような彼を横目で見ながら、彼女はぱっと思いつく。道端に生み落とされた犬のウンコのウンチ君を主人公に、ウンチ君が親切なウン子ちゃんと母(つまり落とし主の犬)を探し求めるという絵物語。さらさらっと落書きする。
 ところが、これが絵本『東京うんこ』となって売れるという。あまりの馬鹿馬鹿しさに、うれしくなった。それと、ウンコ帽子を被って絵本販売に奮闘する出版社の社長。これもすごい。
 実は私、上京間もない頃、高円寺のアパートに住んでいたので、出て来る風景が個人的に大変懐かしいのだ。

 

東京うんこ
2011
監督:村松英治
出演:宮沢マキ、大迫一平、横山真弓、長島伸治、北野恒安、竹田尚弘、芹澤興人