シネコラム

第184回 処女の生血

第184回 処女の生血

平成七年七月(1995)
六本木 俳優座劇場

 なかなか楽しいドラキュラのパロディ。ルーマニアのドラキュラ伯爵は闇に君臨する魔王ではなく、ただの哀れな吸血病患者。処女の血を吸わないと長生きできない。最初の場面では白髪を染めて化粧している。一族はまさに死に絶えんとしている。
 ルーマニアでは顔を知られているので、犠牲者を調達できず、仕方なしにイタリアへと旅立つ。イタリアはカトリックの国だから、娘は結婚するまでは処女だろう。
 落ちぶれた侯爵の屋敷を訪れ、四人の娘を見初める。長女は年増の行かず後家だから、これは除外して、次女に求婚する。と、これが庭男と関係している。知らずに血を吸ったために、バスルームで胸を抑えて吐く場面では客席が大爆笑。三女の血を吸うと、これもまた庭男が手をつけており、吸血鬼が気の毒になるからおかしい。
 四女はまだ十四才で、これなら処女。若すぎるが、手先にした次女と三女を使ってこれを襲おうとするが、庭男がいち早く察して、吸血鬼の餌食にするよりはと理屈をつけて、その処女を奪ってしまう。
 大年増の長女が実は処女で、その血を吸い、少しは元気を取り戻したドラキュラは、結局、庭男の農具でばらばらに切り刻まれて、杭を打ち込まれ、哀れな最期をとげる。
 庭男のジョー・ダレッサンドロはいかにも下品で軽薄なチンピラタイプ、それにひきかえドラキュラのウド・キアは知的で気品がある。だから、せっかく吸血鬼が退治されたというのに、吸血鬼の方に感情移入してしまうのだ。
 アンディ・ウォーホルの製作で、落ちぶれた侯爵がヴィットリオ・デ・シーカ、村人がロマン・ポランスキーと名監督が出演。
 この映画の前作『悪魔のはらわた』ではフランケンシュタイン男爵を演じたウド・キアであるが、この後、いくつかの吸血鬼映画にも出ている。よほど吸血鬼が気に入ったのか。

 

処女の生血/Blood for Dracula
1974 アメリカ/公開1975
監督:ポール・モリセイ
出演:ジョー・ダレッサンドロウド・キアヴィットリオ・デ・シーカロマン・ポランスキー

 

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