シネコラム

第168回 世にも憂鬱なハムレットたち

第168回 世にも憂鬱なハムレットたち

平成八年十二月(1996)
日比谷 シャンテシネ3

 

 鳴かず飛ばずの俳優ジョーが心機一転、俳優生命を賭けて『ハムレット』に挑戦しようとする。渋るエージェントに頼み込んで、わずかな資金を出してもらい、オーディションを行う。
 集まったの連中、みな売れない俳優ばかり。それでも意気込んで会場へ向かう。会場はジョーの故郷の廃墟となった古い教会。
 ジョーがハムレット役と演出を兼ね、配役は偏屈な老人のクロ―ディアス、アルコール依存のホレイショー、近視のオフィーリア、ゲイのガートルードなど。世話役はジョーの妹モリ―が務める。
 俳優たちはばらばらで、稽古もなかなか満足には進まず、資金も底をつく。こんなひどい出来なら、やめたほうがましなのではないか。
 ところが芝居というのは面白い。なんとか形になって来るのだ。それに下手だったり、変人だったりはするが、みんなけっこう真面目である。
 そしていよいよ初日というときに、いきなり主役のジョーにハリウッド映画出演の話が舞い込む。ジョーはハムレットのごとく、To be or not to beと悩むが、結局舞台を捨ててハリウッドへ。
 当日、教会は観客で埋まる。ジョーの代役は妹のモリー。緊張でせりふも出ない。果たして、舞台はどうなるのか。
 監督と脚本がロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身、舞台を知り尽くしているケネス・ブラナー。若い頃から才人であった。
 古い教会で演じられるシェイクスピア劇。渋谷の教会ジアンジアンで劇団シェイクスピアシアターの舞台を何度も観たことを思い出す。

 

世にも憂鬱なハムレットたち/A Midwinter’s Tale
1996 イギリス/1996
監督・脚本:ケネス・ブラナー
出演:マイケル・マロニー、リチャード・ブライアーズ、マーク・ハドフィールド

 

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