第167回 恋に落ちたシェイクスピア
平成十一年五月(1999)
錦糸町 リッツ劇場
シェイクスピアの生没年は一五六四年から一六一六年で、実は私、他の人の生没年は知らなくとも、シェイクスピアだけは知っている。シェイクスピア劇には殺人場面がたくさん出てくることから、「人殺しにはいろいろある、一五六四には一六一六ある」と覚えればいい。学生時代、演劇史の先生からそう教わったのだ。
それはともかく、シェイクスピアの作品はたくさん映画化されているが、作者であるシェイクスピア自身を主人公とした映画は珍しい。若き日のシェイクスピアの恋を描いたフィクション『恋におちたシェイクスピア』
シェイクスピアは新作『ロミオと海賊王』が書けずに苦しんでいるが、その時、富豪の娘ヴァイオラと出会い、恋におちる。ヴァイオラには貴族の婚約者がおり、シェイクスピアにも国に残した妻子がある。
障害のある恋。男装の女性。偶然のチャンス。これらはシェイクスピア劇の常套手段だが、それらの趣向が盛り込まれ、まるでシェイクスピア劇のごとく物語は展開する。
ヴァイオラとシェイクスピアの実らぬ恋が『ロミオとジュリエット』を完成させる。別れがあり、ヴァイオラは結婚して新大陸へ。そしてシェイクスピアは新作『十二夜』にとりかかる。
エリザベス女王のジュディ・デンチは貫禄があり、他の映画ではヴィクトリア女王も演じている。
脚本は『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』のトム・ストッパード。
恋人ヴァイオラをジョセフ・ファインズのシェイクスピアに寝取られる婚約者がコリン・ファース。コリン・ファースは『イングリッシュペイシェント』では妻をレイフ・ファインズに寝取られる役だった。
恋におちたシェイクスピア/Shakespeare in Love
1998 アメリカ・イギリス/1999
監督:ジョン・マッデン
出演:ジョセフ・ファインズ、グウィネス・パルトロー、ジェフリー・ラッシュ、コリン・ファース、ベン・アフレック、ジュディ・デンチ