シネコラム

第109回 オースティン・パワーズ

第109回 オースティン・パワーズ

平成十年八月(1998)
渋谷 シネセゾン渋谷

 

 六十年代は007がヒットして、スパイ映画が大流行だった。パロディもたくさん生まれたが、『オースティン・パワーズ』はその六十年代のスパイが現代(九十年代)に甦るというコメディである。
 世界征服を企む悪の帝王イーブル博士は英国の秘密情報員オースティン・パワーズに追われ、自らを冷凍して宇宙空間で冬眠に入った。このときのロケットがファミリーレストランビッグボーイというのも笑える。
 それから三十年。冬眠から目覚めたイーブル博士が再び世界征服の野望を燃やす。英国政府はやはり三十年前にイーブルへの対抗策としてオースティン・パワーズを冷凍保存しており、これを解凍する。
 あとはもう次から次へとギャグが続く。
 冬眠から覚めたイーブル博士が世界征服の手始めにスキャンダルをでっちあげて英国王室を脅迫するというと、既にスキャンダルでむちゃくちゃになっていると聞かされがっくり。それなら悪魔の発明気象破壊装置で大気のオゾン層を破壊しようというと、それも既に破壊されている。悪の組織は既に合法企業となっており、年収が数億ドルといわれ、さらにがっくり。
 オースティン・パワーズは悪の組織に乗り込んで、イーブルの子分たちを次々と殺すが、場面変わって、閑静な住宅街。男の子が学校から帰って来る。そこへ電話。受けて顔色を変える主婦。部屋の片隅の写真立てに子分Aの肖像。オースティンに殺された無名の子分の家庭だったのだ。端役の悲劇。
 なんという馬鹿馬鹿しさ。そして、マイク・マイヤーズがオースティンとイーブルの二役をこなすというのも、すごい。

 

オースティン・パワーズAustin Powers
1997 アメリカ/公開1998
監督:ジェイ・ローチ 脚本:マイク・マイヤーズ
出演:マイク・マイヤーズエリザベス・ハーレイマイケル・ヨーク、ロバート・ワグナー