シネコラム

第103回 オリビアちゃんの大冒険

第103回 オリビアちゃんの大冒険

平成元年八月(1989)
新宿歌舞伎町 シネマミラノ

 

 ディズニーアニメにもちゃんとシャーロック・ホームズが登場する。
『白雪姫』『ダンボ』『シンデレラ』『不思議の国のアリス』『わんわん物語』『眠れる森の美女』『ピーターパン』『101匹わんちゃん大行進』など、幼い頃から祖母に連れられて観に行ったものだが、ある程度の年齢になると、当然ながらぴたりとディズニーアニメは観なくなった。
 私自身が父親となり、今度は幼い子供を連れて浦安のディズニーランドに行き、昔観たディズニー映画をなつかしんだものだ。大人になってから、まだ子供も生まれる前、妻とふたりで観に行ったディズニーアニメが一本だけあり、それが『オリビアちゃんの大冒険』で、ホームズのパロディとなっている。
 舞台は十九世紀末の霧のロンドン。ベイカー街221B。
 探偵ホームズとワトスン医師の暮らすこの家の床下に、二匹のネズミが住んでいた。探偵ネズミのベイジルと医師ネズミのドクター・ドウソン。
 地下のネズミ王国では凶悪なドブネズミのラティガン教授が王国を乗っ取る陰謀を企んでいる。オリビアちゃんの依頼で悪事をつきとめるベイジル。ベイジルとラティガン教授の対決は、そのままホームズとモリアーティ教授をなぞっていた。
 ディズニーアニメは私が大人になってからも『ライオンキング』『美女と野獣』『アラジン』などなど次々と作られているが、そんな中でこの『オリビアちゃんの大冒険』はとても地味で目立たない一本で、ディズニーランドのパレードにも登場しない。が、ホームズ物語のパロディとしての面白さは格別だった。
 原作はイヴ・タイタスの児童読物『ベイカー街のベイジル』シリーズ。こちらは七十年代の後半にあかね書房から絵本で数冊出ていて、もちろん、私の本棚にも並んでいる。
 後に読んだキム・ニューマンの『ドラキュラ紀元』の内容がこの映画に似ているのは偶然だろうか。

 

リビアちゃんの大冒険/The Great Mouse Ditective
1986 アメリカ/公開1989
監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ、デイヴ・ミッチェナー
アニメーション