第102回 シャーロック・ホームズの素敵な挑戦
昭和五十二年四月(1977)
大阪 梅田 三番街シネマ2
ニコラス・メイヤーの小説『シャーロック・ホームズ氏の素敵な冒険』はワトスン医師の未発表の手記が発見されたという形式で、『最後の事件』の真相がテーマになっている。
日本では一九七五年に立風書房より発刊され、すぐに買って読んだ。
映画化されたのは一九七六年、日本で封切られたのは一九七七年の四月のことで、すぐに映画館に飛んでいった。
一八九一年、ベイカー街にホームズを訪ねたワトスン医師は愕然とする。コカイン愛好者であったホームズがとうとう中毒で幻覚症状に陥り、ヨーロッパ全土が犯罪界のナポレオンである天才数学者の手で危機に瀕しているという妄想にとりつかれていたのだ。犯罪者とされたのが、さえない地方の数学教師であるモリアーティ。
ワトスンはこのモリアーティを使って、ホームズをスイスまで連れ出し、そこで当時最新の学説をとなえる精神医学者ジグムント・フロイト博士に治療を依頼する。
ホームズ役は脇役で売り出し中のニコル・ウィリアムソン、ワトスンがロバート・デュヴァル、モリアーティがなんとシェイクスピア俳優のローレンス・オリヴィエ、そしてフロイトがアラン・アーキン、ヒロインにヴァネッサ・レッドグレイプ。
後半は回復したホームズがスイスの悪貴族と対決する物語になっている。
ちなみに、オリジナルのタイトルは「七パーセントの溶液」で、これはコカイン常用の危険をワトスンに注意されたホームズが、「たった七パーセントの溶液だよ」と軽くかわす場面が正典『四つの署名』にあり、そこからとったものだ。
シャーロック・ホームズの素敵な挑戦/The Seven-Per-Cent Solution
1976 アメリカ/公開1977
監督:ハーバート・ロス
出演:ニコル・ウィリアムソン、ロバート・デュヴァル、アラン・アーキン、ヴァネッサ・レッドグレイプ