シネコラム

第90回 カサブランカ

第90回 カサブランカ

昭和五十一年一月(1976)
大阪 堂島 毎日文化ホール

 

 イングリット・バーグマンといえば、やはり一番に浮かぶのが『カサブランカ』である。第二次大戦中、フランスはドイツの支配下にあり、フランス領モロッコカサブランカもドイツ軍が幅を利かせている。
 カサブランカで酒場を経営しているアメリカ人リック。これがハンフリー・ボガート。この町にはヨーロッパからの難民が多く滞在して、アメリカへ脱出する機会を待っている。リックは闇の売人からたまたま旅券を手に入れる。そこに反ナチス運動の指導者ラズロ夫妻が旅券を求めて現れる。
 リックはラズロ夫人を見て驚く。彼女こそ、パリ陥落の直前に自分の前から姿を消した恋人のイルザだった。イングリット・バーグマンのイルザ、輝くような美女。
 イルザがパリでリックと出逢ったのは、ラズロがナチスに殺害されたと報じられた直後で、傷心のイルザはリックと愛し合うが、やがて夫の死が誤報であったと知り、リックの前から黙って去ったのだ。傷心のリックは彼女が忘れられず、カサブランカに流れて、酒場の主人になっていた。
 リックは旅券の提供をいったん断る。が、夜、イルザがひとりで再び訪ねてくる。リックは愛する女のため、彼女の夫の反ナチス活動支援のため、ふたりの国外脱出に協力するのだった。
 空港での別れの場面。クロード・レインズの警察署長とふたりで飛び去る飛行機を見送るリック。流れる曲はアズ・タイム・ゴーズ・バイ。
 当時のハリウッドでは戦意高揚のため、反ナチス映画がたくさん作られ、これもその一本。プロパガンダではあるが、チャップリンの『独裁者』やルビッチの『生きるべきか死ぬべきか』とともに、後世に残る名作である。

 

カサブランカ/Casablanca
1942 アメリカ/公開1946
監督:マイケル・カーティス
出演:ハンフリー・ボガートイングリット・バーグマン、ポール・ヘンリード、クロード・レインズ、コンラート・ファイト、ドット・ウィルソン、ピーター・ローレ