シネコラム

第87回 追憶

飯島一次の『映画に溺れて』

第87回 追憶

平成二十三年十一月(2011)
日比谷 みゆき座

 

『追憶』が日本で初めて公開されたのは、私の学生時代。映画の背景は第二次大戦前から戦後の赤狩りの頃まで。
 ユダヤ系で勉強熱心、左翼運動に燃える生真面目な女子学生ケイティがバーブラ・ストライサンド。スポーツ万能、酒好き女好きの金持ち男子学生ハベルがロバート・レッドフォード
 ふたりは大学の小説創作クラスでいっしょになる。ケイティが必死で書いた短編よりも、頭からっぽのスポーツマンと思われていたハベルの小説が、ユーモアも知性もたっぷりで高く評価され、悔し泣きに自分の原稿を破り捨てるケイティ。
 性格も考え方も全然違うふたりが、いつしか、お互い意識し、惹かれあい、卒業パーティで一度ダンスを踊っただけで別々の道へ。
 戦争が始まり、ニューヨークのラジオ局に勤めるケイティは、ナイトクラブで軍服姿で酔っ払うハベルと再会。生真面目で厳しい急進派の彼女、保守的で快楽主義的なハベル。そんなふたりが結ばれる。
 戦争が終わって、脚本家としてハリウッドへ招かれるハベル。パートナーとして同行するケイティ。ふたりの間に吹き荒れるマッカーシズムの嵐。ケイティは真っ向から赤狩りに戦いを挑み、穏健なハベルはついていけず。
 どんなに愛し合っていても、性格や考え方の違うふたりが長年連れ添うのは難しいのか。切ないラストシーンには胸が詰まる。
 バーブラ・ストライサンドの歌う主題歌がヒット。あの頃のバーブラ、『おかしなおかしな大追跡』『ハロー・ドーリー』『晴れた日に永遠が見える』『フクロウと子猫ちゃん』、コメディやミュージカルにたくさん出ていたが、この『追憶』は珍しくシリアスな恋愛ものだった。

 

追憶/The Way We Were
1973 アメリカ/公開1974
監督:シドニー・ポラック
出演:バーブラ・ストライサンドロバート・レッドフォードブラッドフォード・ディルマン、ロイス・チャイルド、ジェームズ・ウッズ

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