シネコラム

第79回 恋はデジャ・ブ

飯島一次の『映画に溺れて』

第79回 恋はデジャ・ブ

平成五年十月(1993)
有楽町 ニュー東宝シネマ1

 

 SF仕立てのラブコメディ。なんといってもアイデアがいい。同じ日が何度も何度も繰り返されるという時間SFもの。
 地方局で天気予報のキャスターを勤める主人公、売れてもいないのにスター気取りで、職場でも嫌われ者。
 二月二日の聖燭節(タイトルのGroundhog Day)で田舎町に天気予報するウッドチャックの取材に出かける。同行は女性ディレクターとカメラマンの二人。前日に宿に泊まり、翌朝、六時に起きて、祭りの会場に向かう。途中でセールスマンをしている高校時代の同級生に偶然出会ったり、水溜まりに足を突っ込んだりしながら、現場に到着し、簡単に本番を済ませると、さっさとこんな田舎町から帰ろうと、車に乗り込む。ところが吹雪で道路は閉鎖され、もう一晩民宿に泊まることになる。
 翌朝、六時に目覚めると、目覚ましラジオは昨日と同じ曲を流し、同じ会話で始まっている。廊下へ出ると、昨日擦れ違った宿泊客が同じ挨拶をする。民宿のおばさんも同じせりふ。町へ出ると、年に一回のはずの聖燭節が今日行われるという。道で高校時代の同級生にまた出会う。会場に行き、昨日と同じ場面を繰り返す。
 そして、一夜明けるとまた二月二日。これが延々と続くのだ。そこで主人公、好き勝手を始める。なにをやろうと、翌日にはリセットされている。町の人々にとってはたった一日のことだが、彼は毎日毎日同じ日を経験し、町の出来事に精通することになる。
 やがて、女性ディレクターとデートし、毎晩彼女を口説くのだが、必ず振られる。彼に果たして二月三日は訪れるのか。
 この手のファンタスティックな喜劇は出演者が達者でなければ成立しない。その点、ビル・マーレイはまさに適役だった。

 

恋はデジャ・ブ/Groundhog Day
1993 アメリカ/公開1993
監督:ハロルド・ライミス
出演:ビル・マーレイアンディ・マクダウェルスティーヴン・トボロウスキー、クリス・エリオット

 

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