第78回 恋のジーンズ大作戦 巨人の女に手を出すな
大好きな三鷹オスカーが閉館したのは平成二年の十二月だった。新婚時代、妻とふたりでしょっちゅう通った三本立て。いったい何本観ただろうか。閉館前のさよならフェスティバル、名画座にふさわしい様々なプログラムが組まれ、ファンに熱い涙を流させたが、中でも貴重な特集のひとつが「興行的にまったく当たらなかった不入り映画」の三本立て。
デンマークのマイナー映画『エレメント・オブ・クライム』が不発だったのはわかるが、ウォルター・ヒル監督の『クロスロード』は心温まる佳作であり、『恋のジーンズ大作戦 巨人の女に手を出すな』にいたっては、どうして当たらなかったのか不思議なくらいに上出来のコメディであった。
ライアン・オニール扮する主人公ボビーは大学の文学講師だが、父親の洋服会社が倒産しかかるので、冬休みの間、呼び戻される。文学のことしか頭にない学者馬鹿が、ファッション業界で右往左往する様が笑いを呼ぶ。父親は闇業者から金を借りていて、返さないと会社を乗っ取られる。そこで、ふたりで闇クラブに挨拶に行くが、そこで親分の妻リラとボビーが一目でお互い恋に落ちる。ボビーは彼女に誘われて家まで行き、いちゃいちゃして裸になったとたんに親分が帰ってくる。あわてて、彼の服を暖炉に投げ込み、寝室のベッドの下にボビーを隠すリラ。親分が寝込んだので、帰ろうとするが、服がない。そこでリラから女物のジーンズを借りる。が、サイズが細すぎて、お尻に穴があく。それをビニールでふさぎ、ほうほうの体で会社まで戻ってくる。それを見たバイヤーたち、斬新で素晴らしいデザインだと飛びつき、穴あきジーンズでたちまち、会社は盛り返す。ああ、馬鹿馬鹿しい。
めでたく、ボビーは大学に戻るが、親分に浮気のばれたリラが、大学までやって来る。それをまた親分が追いかけてきて、たまたま大学の劇場で公演のオペラ『オテロ』が上演中、風邪で調子の出ない歌手に代わって舞台の上でリラがデズデモーナを歌うと、親分もまた舞台に上がり、オテロの歌詞のまま怒り狂った寝取られ夫を演じ、拍手大喝采。
大笑いなのに、ヒットしなかったのはどうしてだろう。長い邦題のせいか。
恋のジーンズ大作戦 巨人の女に手を出すな/So Fine
1981 アメリカ/公開1981
監督:アンドリュー・バーグマン
出演:ライアン・オニール、ジャック・ウォーデン、マリアンジェラ・メラート、リチャード・キール