第77回 少林サッカー
平成十四年六月(2002)
築地 東劇
チャウ・シンチーというのは無茶苦茶だな。私はけっこう好きだが、ただ無茶苦茶なだけの駄作も多い。
一番面白いヒット作といえば、これはもう『少林サッカー』に違いない。
神業のような少林寺拳法の達人が集まり、サッカーチームを作ったらどうなるか。アイディアが秀逸である。
当時のワールドカップにうまく便乗しているが、際物ではなく、上出来のスポーツコメディとして楽しめた。
かつて名選手だった男、ン・マンタ。試合で不正をして、怒った観衆に襲われ足を折られて、今ではサッカー界のボスの下働き。このボスが卑劣な極悪人。
一方、世間では少林寺拳法が廃れ、拳法の達人チャウ・シンチーはデパートの警備員。彼がウ・マンタと出会い、その才能を認められて、今はみじめな暮らしをしている少林寺の兄弟弟子たちを集めてチームを作る。六人がそれぞれ得意の業を生かし、試合に次々勝ち続ける。痛快である。
蹴ったボールで石の壁が崩れる。これなら、あっという間に優勝だろうと思うが、そうは簡単にいかない。
ボスの配下の極悪チーム、アメリカの非合法筋力増強剤を使ってドーピングモンスターと化し、反則し放題。少林寺チームよりもはるかに手強いのだ。
この人間離れしたモンスターチームに少林寺チームの兄弟弟子たちは次々に倒れていく。
だが、それよりも、これはとんでもない喜劇で、登場人物が唐突に歌いだしたり、美人女優が馬鹿馬鹿しい扮装したり。これこそ、チャウ・シンチー映画である。
少林サッカー/少林足球
2001 香港/公開2002
監督:チャウ・シンチー
出演:チャウ・シンチー、ン・マンタ、ヴィッキー・チャオ