シネコラム

第66回 エロ将軍と二十一人の愛妾

第66回 エロ将軍と二十一人の愛妾

平成三年三月(1991)
大井 大井武蔵野館

 

 八代将軍吉宗の孫が十代徳川家治、その治世は田沼意次が権勢をほしいままにし、田沼時代と呼ばれた。
 家治の世継の家基が不審な急死をとげ、次の世継に田沼がごり押ししたのが一橋家の豊千代。これが後の十一代家斉だが、家斉は将軍に就いたとたんに田沼を失脚させてしまう。
 史実では家斉には二十数人の側室がいて、子供の数は五十人以上、その養子先、嫁ぎ先に選ばれた各大名は苦慮した。
 東映の『エロ将軍と二十一人の愛妾』、とんでもないタイトル。田沼が迎えた一橋家の養子の真相をコメディタッチで描いた異色時代劇である。
 世継の家基が急死し、田沼が一橋家から迎える養子の豊千代が、吉原で馬鹿馬鹿しい事故に遭う。それで、治療が終わるまで、替え玉が必要となり、湯屋で三助をしている瓜二つの角助が世継に仕立てられ、西の丸に迎えられる。ところが将軍家治が急死し、今度は角助が十一代将軍となってしまい、大奥で女たちに次から次へと手をつけて、好き勝手をするというポルノ仕立て。
 怒った田沼は回復した本物と偽者の角助を入れ替えようとするが、女鼠小僧の策略で、本物の行方はわからなくなり、とうとう権力の味を覚えた偽将軍の手で田沼は失脚。最後はもうめちゃくちゃ。大奥での大混乱。側室たちはもとより、京から来た正室の子まで、すべて角助の子であったというオチ。
 東映なので時代劇としては本格的、内容は七十年代の日活ロマンポルノに対抗したピンク路線である。
 田沼が安部徹、用人が名和宏と渋く、池玲子杉本美樹といった当時のセクシー女優がたくさん出ており、コメディなので由利徹田中小実昌も見られる。

 

エロ将軍と二十一人の愛妾
1972
監督:鈴木則文
出演:池玲子杉本美樹渡辺やよい、安部徹、名和宏、林真一郎、由利徹

 

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