第40回 ファントム・オブ・パラダイス
昭和五十年七月(1975)
大阪 梅田 梅田地下劇場
結局、私は怪人が好きなのだ。怪鳥のようなマスクで、黒づくめのレザースーツ、黒いマントを翻して、舞台裏を駆け巡り、愛するフェニックスにスポットライトを当てるファントムが。
ミュージカル『オペラ座の怪人』を観たとき、あまり感動しなかった。実は若いころに観た『ファントム・オブ・パラダイス』があまりに素晴らしすぎて『オペラ座の怪人』は見劣りしてしまうのだ。サイレントの『オペラの怪人』も、レスリー・チャンの『夜半歌聲』もやっぱりパラダイスと比べると、うーん、である。
音楽業界を牛耳る謎の男、デスレコード社主スワン。若き作曲家ウィンズロー・リーチはスワンのために自作のカンタータ『ファウスト』を奪われ、無実の罪で投獄される。刑務所のラジオで、自分の曲が流れていて、それも大嫌いなグループが歌っている。怒りに我を忘れて脱獄したウィンズローはデスレコード社に忍び込んだ際、誤ってプレス機に挟まれ、焼け爛れた顔を押さえて海に消える。
亡きウィンズロー・リーチの『ファウスト』をもとに、スワンの常設劇場ザ・パラダイスが開場されるが、初日に怪人があらわれ、ショーの主役をステージの上で焼き殺すのだ。この怪人こそ、死んだはずのウィンズローであった。
スワンはコーラスガールのフェニックスを新しい主役に選ぶ。怪人は愛する彼女のために曲を完成させる。が、いくら愛しても、彼女には気持ちが届かない。醜い顔のファントム。遠くから見守るだけ。それを知りながら、スワンは彼女を自分のものにする。絶望のファントムはデスレコード社との契約で自殺することさえ禁じられている。
そしてスワンのおぞましい正体。ファウストさながら、悪魔を後ろ盾に音楽業界のトップとなった不老不死の魔王。スワン役のポール・ウィリアムスはこの映画の音楽も担当している。
ファントム・オブ・パラダイス/Phantom of the Paradise
1974 アメリカ/公開1975
監督:ブライアン・デ・パルマ
出演:ポール・ウィリアムス、ウィリアム・フィンレイ、ジェシカ・ハーパー