シネコラム

第41回 アルゴ探検隊の大冒険

第41回 アルゴ探検隊の大冒険

昭和四十年(1965)
大阪 八尾 八尾小学校講堂

 

 昔は小学校でたびたび映画の上映があった。中でも特に印象深いのが『アルゴ探検隊の大冒険』と『白雪姫と道化者』の二作である。
アルゴ探検隊の大冒険』はギリシア神話の映画化で、当時、児童書のオリンポスの神々に夢中だった私は、ハリーハウゼンの特撮による実写に目を瞠った。
 英雄イアソンが大型船を建造し、ヘラクレス他の勇者を集め、黄金の羊の毛皮を求めて船出する。それをゼウス他、天界の神々が手を貸しながら見守っている。
 青銅の巨人、怪鳥ハーピイ、半魚の海神、七つ頭の大蛇。どれもリアルに動いて凄まじかった。
 航海の果て、異国コルキスに到着した一行だが、簡単に金羊毛は手に入らない。イアソンは七つ頭の大蛇を退治するが、コルキス王が死んだ大蛇の歯を地面に撒くと、そこから生え出てイアソンを襲う骸骨の兵士たち。すごい特撮である。
 恋仲になった王女メディアに助けられ、無事に金羊毛を手にしてイアソンは船出する。いっしょに船に乗っているメディア。ラスト、ふたりのキスシーンに小学生たちは歓声をあげ、映画は終わる。
 イアソンとメディアのその後の恐ろしい運命を知ったのは、大人になってパゾリーニの『王女メディア』を観てからのこと。
 特撮を駆使したギリシア神話は、怪獣映画やSF同様にわくわくしたし、着ぐるみの怪獣と違って、コマ撮りの怪物は実に本物らしかった。
 学校の映画上映会といえば、文部省推薦の「いい映画」が多いのだが、ハリウッドの超娯楽作『アルゴ探検隊の大冒険』やドタバタ喜劇『白雪姫と道化者』を選んでくれた選定担当の先生には今でも心から感謝する次第である。

 

アルゴ探検隊の大冒険/Jason and the Argonauts
1963 アメリカ/公開1964
監督:ドン・チャフィ、特撮:レイ・ハリーハウゼン
出演:トッド・アームストロング、ナンシー・コヴァック、オナー・ブラックマン