第34回 女優霊
平成九年一月(1997)
池袋 シネマセレサ
中田秀夫監督の『リング』は怖かったが、もう一本、中田監督のさらに怖い映画が『女優霊』である。
怖い。不気味。ひたすら観客を怖がらせるだけに徹した映画。怖がらせるといっても、わあっと脅かすのではなく、じわじわ、ぞおっとさせるのだ。
主人公が売れない若手映画監督という設定で、演じていたのは柳ユーレイ。怪談の主演俳優が柳ユーレイだなんて、洒落がきついなあと思って、観始めると、これが淡々とした作り。
映画監督がフィルムを現像すると、そこに妙なものが写っている。当時はまだ、デジタルでなくフィルムの時代。現像するまで、どんな風に仕上がっているのかわからない。監督がなんだろうと思ってよく見ると、女の姿が。これ、気味が悪いのだ。
撮影現場で、その後、いろいろと事故が起きて。
最後、あまりの怖さに背筋が凍りついた。怖い映画が嫌いな人には、この映画だけは絶対にすすめたくない。
今でも歌舞伎などで『四谷怪談』を上演するときは、四谷のお岩様にお参りに行かないと、事故が起こると言われている。
この『女優霊』はそういった類の怖さなのだ。
それを中田監督は実に気持ち悪く作っている。
いやなものを見たなあ(これは怪談への褒め言葉)とぞくぞくして、私、その夜はひとりでエレベーターに乗るのも怖かった。