シネコラム

第23回 ブラックライダー

3第23回 ブラックライダー

昭和四十七年九月(1972)
大阪 阿倍野 アポロローズ

 

 七十年代、アメリカの人種問題を扱った映画が社会派からエンターテインメントまでたくさん作られて、シドニー・ポワチエもまた西部劇『ブラックライダー』を監督している。
 南北戦争直後の西部。奴隷から解放された南部の黒人たちが新天地を求めて西部へとやって来る。そのガイドをつとめるのが元北軍兵士のバック。ポワチエが自ら主演。
 西部の白人たちは、黒人がやって来るのが面白くない。ならず者が徒党を組んで黒人の幌馬車を襲い、金品を奪い、彼らを南部に再び奴隷として売り飛ばそうと企む。
 これと戦うのが黒人ガイドのバック。彼と喧嘩しながらも、行動を共にするのがハリー・ベラフォンテの黒人牧師。あのバナナボートのベラフォンテが俳優として牧師でガンマンという役をかっこよく演じていた。
 最後、黒人たちがならず者の白人のために窮地に陥るのを、なんとインディアンが助けるという場面、白人は徹底的に悪者だった。
 それで思い出すのが、当時TVで毎週観ていたアメリカの西部劇『二匹の流れ者』のこと。これも南北戦争直後の西部。
 元南部の大地主で南軍将校だった男。戦争で家も土地も家族もすべて失い、さすらいの賞金稼ぎになっている。この男がひょんなことでもうひとりの賞金稼ぎに出会う。颯爽としたガンマン、足からすうっとカメラが上に上がっていって、顔がアップになると、なんと黒人。
 南部の元大地主と元奴隷という過去をお互い引きずりながら、いがみ合い、ときには協力しあい、ふたりのガンマンが悪党たちを殺していく。黒人ガンマンが白人の悪党を鞭打つ場面があり、一度観ただけなのに、不思議と記憶に残った。後にタランティーノ監督の『ジャンゴ』にも似た場面があり、あっと思った。

 

ブラックライダー/Buck and the Preacher
1972 アメリカ/公開1972
監督:シドニー・ポワチエ
出演:シドニー・ポワチエハリー・ベラフォンテ