シネコラム

第8回 さらば荒野

飯島一次の『映画に溺れて』

第8回 さらば荒野

 

昭和四十六年九月(1971)
大阪 難波 南街劇場

 

 西部劇のタイトルには「荒野」がつくものがけっこう多い。『荒野の七人』『荒野の決闘』『荒野の用心棒』『荒野のストレンジャー』などなど。
『さらば荒野』を観たのは、高校三年のとき、日曜日で映画館は立ち見の満席だった。一番うしろで背伸びしながら観たのに、映画が面白くて、あまり苦にならなかった。若かったのだ、私も。

 金持ちの農園主たちが集まって、バッファロー狩りに行く準備。最新式の望遠レンズ付き長距離ライフルをみんなで試そうというのだ。
 一方、ならず者の一味。首領は今の生活に嫌気がさしている。こんな境遇にあるのは、自分に学がないからだ。読み書きを覚えて、真人間になりたい。そんな願望から、町の小学校の女教師を拉致して、読み書きを習おうとする。根がならず者なので、やることが乱暴で無茶苦茶なのだ。

 さて、いよいよバッファロー狩りに出発という農園主たちのもとに、リーダー格の奥さんがさらわれたとの連絡が入る。小学校の先生は、実はリーダー格の夫人によるボランティアだった。農園主たちは、狩りの行き先をさらわれた夫人の救出に変更し、そして追いつく。
 高性能長距離ライフルで、見えない場所から、ならず者をひとりひとり撃ち殺すハンティングパーティ。相手が誘拐犯とはいえ、殺人をゲームのように楽しむさまは、かなり卑劣で、権力者の傲慢さそのもの。
 ならず者たちは、見えない敵に脅え、逃げ回り、次々と殺されながら、やがて反撃する。いつしか首領と女教師の間に愛情が芽生えていた。

 首領がオリバー・リード、農園主がジーン・ハックマン、さらわれる妻がキャンディス・バーゲン。当時はゴージャスな美女だった。

 

さらば荒野/The Hunting Party
1970 アメリカ/公開1971
監督:ドン・メドフォード
出演:オリバー・リード、キャンディス・バーゲンジーン・ハックマン

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