明治一五一年 第20回
今日も一五一年の小さな波紋なの
だと少しずつ衰えていく日日に
爆ぜる名残として地面に拡がり続ける
会津から北へ向かう足首の
小さな裸形は具現する風の行方を
いまだに晒すきみの手足
だねって水に映る面影を追う
静かに辿りながら戻らなくなる
流され埋もれ記憶の隅に沈む
騒めきに積まれる皮膚のざらつきや
地形に沁みる読めぬ悲鳴を紡ぎ
さらに古くへと放出する眼に乱れ
いまだに晒すきみの手足
だねって切り崩す地形を追う
ままに均衡を失う南洋に沈み続ける
積み重なる人影の声声が集い
いつまでもたゆたう時間の陥没は
連綿として首筋まで辿る痛みの
波打ち際ならば迸る魂の底の
いまだに晒すきみの手足
だねって出会えない背中を追う
破綻は遥かにかすみ留まらず傷付く
耐えがたき時間の繰り返しに
爆ぜる帰らない足首たちの重なりは
呼ばれる誰かの声声に騒めき
知られることもなく漂い名残に潰え
いまだに晒すきみの手足
だねって反射する意識の奥底を追う
今日も一五一年はゆっくり暮れいくの
だと静かに彷徨える日日に
書き足す関節の軋みを掲げるために
踏み出す弱まる起伏の表面の
浮上する何度も流された人たちの
いまだに晒すきみの手足
だねって乾燥する道筋を追う
まだ朽ちない眼球が執拗に踏む
明日の水辺に反射する空蝉を集める
散る物語を掴む痩た指先が
振り返りつつまた燃え伝染する
内臓まで長長と伸びる影絵を留め
いまだに晒すきみの手足
だねって流れない体温を追う
破綻する繰り返しの囁く倒れた足首
たちの訪れのする方向に戻り
どこにも辿り着けずに霧散する
わだかまる悲鳴を包み続く丘陵の
片側にざわめく一五一年の
いまだに晒すきみの手足
だねって沸き上がる日没を追う
数えきれない見えない眼が燃え落ちる
誰も愛さないで下さいとまた
崩れていく客死する耳の音に満ちた
狂えない感触だけが歩む枯野原に
沈み色褪せた散らばる音は潰え