第675回 ハヌ・マン
令和六年十月(2024)新宿 新宿ピカデリー
西遊記の斉天大聖孫悟空はインドの猿神ハヌマーンがモデルとの説もある。そのハヌマーン伝説とアメリカンコミックのスーパーヒーローを混ぜ合わせたのがインド映画『ハヌ・マン』であり、ヒーローものをひねった『キック・アス』や『シャザム』に通じる。
一九九〇年代、インドの都会に住む少年マイケルはスーパーヒーローに憧れるが、蜘蛛に噛まれても手から糸は出ない。仲良くなった秀才と遊びながらスーパーマンやスパイダーマンがどうしてヒーローになったのか考える。ヒーローの条件は両親がいないこと。その直後、マイケルの家が火事になり、両親が亡くなる。
時が流れ、インドの町を荒らすギャング団が謎のスーパーヒーローに退治される事件が相次ぐ。そのヒーローこそ、今や大企業のオーナーとなったマイケルだった。体力を鍛え、財力で科学を応用し、夢を実現したのだ。ほとんどバットマンかアイアンマンだが、もっと超自然的な神通力がほしい。
いきなり場面が変わって、僻地の森と海に囲まれた農村。村を支配するボスが村人から作物を年貢として取り上げる。現代なのに、まるで文明と無縁の暮らし。村の青年ハヌマントゥはボスに虐待される友を助けようとして海に転落し、海底で不思議な光る石と出会い、超人的な能力を得る。その石こそ、古代の神話の猿神ハヌマーンの血でできた結晶だった。
医師となって都会から帰ってきた憧れの女性に思いを寄せながら、ハヌマントゥは石の神秘的な力でボスを屈服させ、村を平和に導こうとする。
そのとき、村に大企業の一団がやって来る。インターネットでハヌマントゥの特殊能力を知ったマイケルが、その秘密をわがものにしようと画策する。ここでようやく最初のマイケルの物語につながるのだ。ヒーローの条件として両親を火事で焼き殺し、ヒーローになったマイケルは利己主義の塊。村を支援し病院を建てるという口実で、村人たちに取り入り、ハヌマーンの石を奪おうとする。ハヌマントゥとマイケルの大決戦。
インド映画なので、アクションに歌と踊りは欠かせない。が、中国の孫悟空とは全然関係のない話だった。
ハヌ・マン/Hanu-Man
2023 インド/公開2024
監督:プラシャーント・バルマ
出演:テージャ・サッジャー、ビナイ・ラーイ、アムリタ・アイヤル、バララクシュミ・サラトクマール、ラビ・テージャ