シネコラム

第566回 砂漠の流れ者

飯島一次の『映画に溺れて』

第566回 砂漠の流れ者

昭和五十年七月(1975)
大阪 中之島 SABホール

 

 暴力描写が評判のサム・ペキンパー作品でありながら、ユーモアあふれるのがジェイソン・ロバーズ主演の『砂漠の流れ者』である。時代背景はガンマンやカウボーイが活躍した西部開拓時代の末期を描いており、『ワイルドバンチ』と同様であろう。
 西部で一旗揚げようと砂金掘りにやってきたケーブル・ホーグはふたりの仲間に裏切られ、銃や水や食料を奪われて砂漠の中に取り残される。
 命からがら飢えと渇きに苦しみながらさまようホーグは、偶然にも砂漠の真ん中に水の湧き出す水源を発見する。砂漠での水は砂金や石油に等しく価値がある。
 たまたま通りかかった女たらしの牧師ジョシュアが水源のある土地の権利を登録することを勧めるが、土地の取得には金がかかる。無一文のホーグは町の役場に出かけ、駅馬車業者に水源登録の融資を持ち掛けるが、一笑にふされ、銀行の頭取に相談する。
 半信半疑ながら水源に魅力を感じた頭取はホーグに百ドルを出資する。懐が温かくなったホーグは町で見かけた娼婦ヒルディと一夜をともにする。
 やがて水源に戻ったホーグはジョシュアの協力で、井戸を掘り、飲料水として水を売り、駅馬車の中継地を経営する。
 ふしだらな娼婦として町を追放されたヒルディがホーグの中継地を訪れる。彼女はホーグと愛し合うが、砂漠の生活は物足りず、サンフランシスコへと旅立つ。
 時が流れ、かつてホーグを裏切ったふたりの悪人が中継駅に立ち寄り、兄貴株がホーグにやられ、もうひとりの気弱なボウエンは中継駅の助手に雇われる。やがて、都会から金持ちになって舞い戻ったヒルディは運転手付きの自動車に乗っており、ホーグは運悪く、自動車に轢かれて命を落とす。主人公が自動車事故で死ぬ西部劇なんて、ペキンパーはすごい。
 ジョシュアのデヴィッド・ワーナーはこの後、『わらの犬』の知的障害者、『タイム・アフター・タイム』の切り裂きジャック、『バンデッドQ』の悪魔などを演じる。

 

砂漠の流れ者/The Ballad of Cable Hogue
1970 アメリカ/公開1970
監督:サム・ペキンパー
出演:ジェイソン・ロバーズ、ステラ・スティーヴンス、デヴィッド・ワーナー、ストローザー・マーティン、L・Q・ジョーンズ、スリム・ピケンズ、マックス・エヴァンス、ピーター・ホイットニー、R・G・アームストロング

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