シネコラム

第630回 キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

飯島一次の『映画に溺れて』

第630回 キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

第630回 キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
令和五年十月(2023)
立川 TOHOシネマズ立川立飛

 

 かつての西部劇では、白人を襲う野蛮人としてタカ派ヒーローにばんばんと撃ち殺されていたアメリカ先住民のインディアン。騎兵隊による大虐殺映画『ソルジャーブルー』では悲惨な被害者の面が強調されたが、いずれにせよ、後味は悪かった。史実ではアメリカインディアンは白人によって土地を奪われ、不毛の荒野に追いやられる。
 二十世紀初頭、オクラハマに追い込まれたオーセージ族の居留地から石油が噴出し、土地の所有者としてインディアンは金持ちとなる。まるで往年のTVコメディ『じゃじゃ馬億万長者』のようだ。瀟洒な家に住み高級車を持ち、白人を家政婦や運転手として雇う。油田の労働力として集まった白人の中にはならず者も多い。そんな中で金持ちのインディアンが次々と変死するが、保安官は捜査せず、事件にもならない。
 第一次大戦から帰還したアーネストは成功した叔父のヘイルを頼って、オクラホマにやってくる。町の名士ヘイルはインディアンの言葉を自由に話し、友好的な白人として先住民から信頼されている。アーネストは町で運転手の仕事につき、やがて石油の権利を持つインディアン女性モーリーと親しくなり、結ばれ、結婚して子供も生まれる。
 変死したインディアンの財産や権利は不正な手口で白人の手に渡る。アーネストの妻モーリーの姉妹たちも病死したり殺害されたりし、モーリーもまた衰弱していく。巧妙なインディアン殺しの黒幕が実はヘイルであり、官憲や悪徳医師と手を結び、裏で強盗や殺人を指図しており、アーネストも最初から叔父の手先として利用されていた。
 モーリーは病気を抱えながらワシントンに陳情に行き、やがてテキサスレンジャー出身の政府の捜査官がアーネストの前に現れる。妻子への愛情と叔父への服従との板挟みになりながら、アーネストは裁判を迎えることになる。

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン/Killers of the Flower Moon
2023 アメリカ/公開2023
監督:マーティン・スコセッシ
出演:出演:レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロ、リリー・グラッドストーン、ジェシー・プレモンス、ブレンダン・フレイザー、タントゥー・カーディナル、ルイス・キャンセルミ、ジェイソン・イズベル、カーラ・ジェイド・メイヤーズ、ジャネー・コリンズ、ジリアン・ディオン、ウィリアム・ベロー、スタージル・シンプソン、タタンカ・ミーンズ、マイケル・アボット・Jr、パット・ヒーリー、スコット・シェパード

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