シネコラム

第687回 リトル・ランボーズ

飯島一次の『映画に溺れて』

第687回 リトル・ランボーズ

平成二十三年四月(2011)
目黒 目黒シネマ

 

 いきなりシルヴェスター・スタローンの『ランボー』の一場面。小さな町の映画館の客席で煙草をくゆらしながらスクリーンをビデオカメラで盗撮している少年。小学生のリー・カーターは乱暴者でいたずら好きの悪餓鬼で、学校でも友達はいない。
 一方、大人たちに交じり、聖書を朗読する少年。ウィルは真面目で内気。家族は母と祖母と妹。父は病死。母は禁欲的な宗派の信者で、いっさいの世俗的な娯楽は家でも学校でも禁止。TVも許されず、小学校でTVを使っての授業の際、ウィルはひとり廊下で自習。授業中の態度が悪く廊下へつまみ出されるリー。ここでふたりは出会うのだ。
 リーは兄と二人で郊外の老人ホームの奥に住んでいる。母がここの経営者と再婚し、比較的裕福で、当時は珍しいビデオカメラを兄が持っており、兄に言われるまま映画館で盗撮した『ランボー』をダビングして小遣い稼ぎ。
 TVも映画も観たことのなかったウィルは、聖書に色鉛筆で絵物語を描いて、想像力を満足させていたが、リーの家でダビング中の『ランボー』を観て夢中になる。初体験の映画を真似て、叫びながら野原を駆け回り、自分がランボーの息子になって悪に囚われている父ランボーを救出す物語を考える。その絵物語を見たリーはウィルを強引に誘う。BBCの少年映像コンテストに応募するため映画を作りたい。兄のビデオカメラを勝手に持ち出し、ウィルを仲間に引き入れ、『ランボーの息子』の撮影が始まる。
 おとなしかったウィルが主役になりきり、カメラの前で大暴れ。リーが監督兼トラウトマン大佐役。最初はふたりであれこれアクション場面を撮影していたが、これにフランスからきた年上の短期交換留学生とその取り巻きが加わり、逆にリーがのけものにされる。
 そこでウィルが中心となって、廃墟の工場跡で撮影中、大きなトラブルとなる。いったいどうなるのかと思わせて、感動的な映画館でのラストシーン。これぞ、映画の映画。
 子供たちがランボーを真似て戦争ごっこする映画ではなく、友達がいなくて孤独だったふたりの少年が映画作りを通じて、遊びながら成長する友情物語である。

リトル・ランボーズ/Son of Rambow
2008 イギリス・フランス/公開2010
監督:ガース・ジェニングス
出演:ビル・ミルナー、ウィル・ポールター、エド・ウェストウィック、ジュール・ミトリュフ、エール・ダッジオン、ジェシカ・ハンズ

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