シネコラム

第677回 ランボー

飯島一次の『映画に溺れて』

第677回 ランボー

令和六年十一月(2024)
立川 シネマシティ2

 

 シルヴェスター・スタローンは一九七六年の『ロッキー』が大ヒットしてスターになるまでは、ほとんど無名の下積みだった。私は『ロッキー』以前の出演作をいくつか観ているが、印象に残ったのは『デス・レース2000年』での殺人レーサーで、公開時には見逃して、スタローンが大スターになってから、リバイバルで観た。
 私は『ロッキー』よりも『ランボー』が好きだ。ベトナムの帰還兵ジョン・J・ランボーが田舎町にかつての戦友を訪ねるが、すでに亡くなっていた。その町で保安官に呼び止められ、町の外へ追い出される。汚いなりの浮浪者が町へ厄介を持ち込むな。が、町を出ようとしないランボーは逮捕され、保安官たちから嫌がらせの暴行を受け、反撃してバイクを盗んで山に逃げ込む。執拗に追跡する保安官の一隊はナイフ一本で応戦するランボーに手を焼き、ヘリコプターから狙撃しようとした保安官助手が落下して死亡。そこで州警察までが山狩りに乗り出しランボーを追い詰める。
 かつての上官が現場に現れ、ランボーはベトナムで叙勲歴があり、ゲリラ戦に長け、医療技術からヘリコプターの操縦までできる不死身の勇者なので、深追いするなと説得する。
 ベトナム戦争の傷を扱った映画は多い。『ランボー』で思い出したのが一九七二年の『ソルジャーボーイ』で、ベトナム帰りの四人組の若者が、牧場経営の夢を抱いて車で旅をし、ある田舎町で嫌がらせを受けたのがきっかけで、ベトナムの悪夢を思い出し、号令をかけ合いながらグリーベレーに戻って町を襲撃するショッキングなラストだった。
 スタローンは『ランボー』でアクションスターの不動の地位を固め、一九八〇年代に現れた『ターミネーター』のシュワルツェネッガーや『ダイハード』のブルース・ウィリスとともにアクションヒーローとなる。『ランボー』『ターミネーター』『ダイハード』いずれもヒットし、続編が次々と作られたが、一作目が抜きん出ており、面白さが持続するのはせいぜい二作目まで。どれも三作目以降は期待しないほうがよかった。

ランボー/First Blood
1982 アメリカ/公開1982
監督:テッド・コッチェフ
出演:シルヴェスター・スタローン、リチャード・クレンナ、ブライアン・デネヒー、ビル・マッキニー、ジャック・スターレット、マイケル・タルボット、クリス・マルケイ、デヴィッド・カルーソ、ブルース・グリーンウッド

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