シネコラム

第673回 レザボア・ドッグス

飯島一次の『映画に溺れて』

第673回 レザボア・ドッグス

平成六年五月(1994)
池袋 文芸坐

 

 カフェで食事をしながらおしゃべりするダークスーツ姿の男たち。マドンナの「ライク・ア・ヴァージン」について、意見を交わす。彼らはそれぞれ本名は名乗らず、ホワイトやブラウンやオレンジと色で呼び合う。お互いの素性を知らされずに集められたのだ。
 クエンティン・タランティーノの出世作『レザボア・ドッグス』は自主映画風の雑な作りなのに、個性派のベテラン俳優が何人も顔を揃えており、初めて観たときは驚いた。
 冷静なハーヴェイ・カイテルがホワイト、軽薄なチンピラのティム・ロスがオレンジ、強面で粗暴なマイケル・マドセンがブロンド、目立たない年寄りのエディ・バンカーがブルー。監督のタランティーノもブラウンとして出演。俺がなんでピンクなんだと苦情を言うのはいかれたスティーヴ・ブシェミ。みんなを仕切るのがスーツを着ていない親分のジョーと息子のエディ。ジョーがみんなの勘定を持つが、チップはそれぞれが置いていくように言われ、そこでまた、チップについてのやりとり。そして、出発。スーツ姿の男たちはこれから宝石店を襲うのだ。
 襲撃の場面はなく、車で逃走するホワイトとオレンジ。オレンジは撃たれたらしく、血まみれの腹を押さえて苦しんでいる。行先は病院ではなく、集合場所の倉庫。
 そこでオレンジを介抱していると、間もなく仲間のひとりピンクが現れる。失敗したのは大勢の警官隊がすぐに駆けつけたからで、仲間も何人か殺された。警察に内通する裏切り者がいるに違いないと主張する。
 次にブロンドが警官をひとり人質にして合流する。刑務所を出所したばかりのブロンドは宝石店の店員を皆殺しにした様子で、きれいな仕事を望んでいるホワイトは狂った人殺しが仲間に加わったと憤慨する。親分の息子のエディがやってきて、ホワイトとともにピンクの隠した宝石を取りに行く。倉庫に残ったのは縛られた警官、重症のオレンジ、凶悪なブロンド。ブロンドは歌いながら、楽しそうに警官を拷問し、石油をかけ、焼き殺そうとする。そして、大殺戮。この男臭さはその後のタランティーノ作品に通じる。

レザボア・ドッグス/Reservoir Dogs
1992 アメリカ/公開1993
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:ハーヴェイ・カイテル、ティム・ロス、マイケル・マドセン、クリス・ペン、スティーヴ・ブシェミ、ローレンス・ティアニー、クエンティン・タランティーノ

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