第567回 チャトズ・ランド
昭和四十七年七月(1972)
大阪 難波 南街劇場
私が初めてチャールズ・ブロンソンを観たのは西部劇『荒野の七人』のリバイバル上映であった。オリジナル『七人の侍』の千秋実に相当する気のいいガンマンの役だ。
ブロンソンといえば、その頃、日本の男性化粧品マンダムのコマーシャルでTVに頻繁に出ていたように思う。役柄としては『大脱走』や『レッドサン』や『狼よさらば』のタフガイが多かった。
アメリカ生まれだが、リトアニア移民の末裔で、祖先はトルコ系であり、容貌は白人にもアジア系にも見える。
一九七〇年代の初め、アメリカでは西部劇の全盛時代は終わっていたと思うが、映画館でリバイバルと新作を合わせて次々に西部劇を観ることが多く、『荒野の七人』『駅馬車』『明日に向って撃て』『男の出発』『さらば荒野』『荒野の七人真昼の決闘』『小さな巨人』『テキサス魂』『ブラックライダー』『レッドサン』『華麗なる対決』『夕陽の群盗』『ワイルドバンチ』『砂漠の流れ者』などなど、好きな作品がたくさんあった。その中でブロンソンがインディアンのアパッチを演じた佳作が『チャトズ・ランド』である。
南北戦争後のアメリカ西部では、白人によるインディアン差別はごく普通に行われていた。町の酒場でひとりのアパッチ、チャトが酒を要求すると、保安官がこれを射殺しようとする。が、チャトは反撃に出て、保安官を殺して逃亡する。
町では元軍人や有力者たちが追跡隊を組織し、保安官殺しの野蛮人としてチャトを追う。だが、山に逃げ込んだチャトは追跡者たちを迷わせ、ひとりひとり血祭にあげて、彼らを仲間割れに追い込む。
チャト役のブロンソンは見るからにアパッチである。
追跡者のリーダー、元南軍将校を演じたのが『シェーン』の殺し屋ジャック・パランス、町の有力者が『さらば荒野』のサイモン・オークランド、追跡隊のひとりがフェリーニの『道』のリチャード・ベースハートという豪華配役だった。
チャトズ・ランド/Chato’s Land
1972 アメリカ/公開1972
監督:マイケル・ウィナー
出演:チャールズ・ブロンソン、ジャック・パランス、リチャード・ベースハート、ジェームズ・ウィットモア、サイモン・オークランド、ラルフ・ウェイト