シネコラム

第557回 ニッポン無責任時代

飯島一次の『映画に溺れて』

第557回 ニッポン無責任時代

平成五年八月(1993)
早稲田 ACTミニシアター

 一九六〇年代、小学生の私がもっとも好きなスターはクレージーキャッツ植木等だった。当時、青島幸男作詞の「スーダラ節」が大ヒットし、植木等主演の『ニッポン無責任時代』が公開された。
 図々しさと調子のよさだけで、努力もせずに出世してしまうサラリーマンの夢物語は、あまりにも現実離れしているので、かえっていいのだろう。
 植木等扮する平等(たいらひとし)は失業中だが、口から出まかせで洋酒会社の社長ハナ肇の氏家勇作に取り入り、社員となって接待ばかりしている。接待とは会社の金で飲み食いすること。
 会社はやがて田崎潤黒田有人に乗っ取られるが、今度は部長にまで出世し、親会社の社長の娘と氏家の息子を結婚させ、会社を去って行く。
 そして、一年後、乗り込んで来る取引先の社長に治まっており、重山規子の社長秘書と最後は結婚するという荒唐無稽さ。
 クレージーキャッツの面々は社長のハナ肇、部長の谷啓、他に犬塚弘石橋エータロー桜井センリ安田伸が平社員を演じている。
 バーの場面や宴会場面などが続き、サラリーマンは気楽なものだと思える。
 主題歌の「無責任一代男」をはじめ、劇中歌の「スーダラ節」「ハイそれまでョ」「ドント節」「五万節」が植木等クレージーキャッツで歌われるが、すべて作詞は青島幸男であった。

ニッポン無責任時代
1962
監督:    古澤憲吾
出演:植木等ハナ肇谷啓、中島そのみ、重山規子、団令子、藤山陽子、峰健二、稲垣隆、田崎潤由利徹松村達雄、清水元久慈あさみ中北千枝子犬塚弘石橋エータロー桜井センリ安田伸、田武謙三、人見明

 

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