シネコラム

第555回 フレンチ・コネクション

第555回 フレンチ・コネクション

昭和四十七年四月(1972)
京都 三条河原町 東宝行楽

 

 ジーン・ハックマンは名優だが、昔はあまり好きではなかった。一番最初に観たのが一九七一年公開の西部劇『さらば荒野』で、粗野で下品で横暴な差別主義者の田舎の金持ち。あの当時、私の周囲にうっとうしい中年親父たちがいたが、ハックマンは連中のイメージに近かったのだ。その後、『フレンチ・コネクション』『俺たちに明日はない』『ポセイドン・アドベンチャー』『スケアクロウ』と観たが、映画はどれも面白いのに、相変わらずうっとうしいハックマンを好きにはなれなかった。
 一九七〇年代の初期、イーストウッドの『ダーティハリー』がヒットしたので、その人気にあやかるためか、スティーヴ・マックィーンの『ブリット』やジーン・ハックマンの『フレンチ・コネクション』が作られた。
 ハックマン演じるニューヨーク市警のドイル刑事は仲間からポパイと呼ばれ、麻薬捜査が専門。相棒のルソーがロイ・シャイダー
 アメリカでマフィアの資金源となっている違法のヘロインがフランスのマルセイユに本拠のある組織から大量に流れ込むことを知ったドイルとルソーはフランス組織の殺し屋から命を狙われる。
 殺し屋が乗るニューヨークの高架電車を自動車で追跡するドイル刑事のカーアクションが見事。一般市民が銃弾に次々と倒れる場面の悲惨さ。
 フェルナンド・レイ扮する上流紳士風の麻薬組織のボスを地下鉄で追い詰めるシーンも忘れられない。あのステッキで地下鉄の扉を開ける場面がかっこよかった。
 ジーン・ハックマンは歳をとっても嫌な役が多かったが、『ミシシッピー・バーニング』『カナディアン・エクスプレス』『エネミー・オブ・アメリカ』などでは、少しは魅力的な善人役も演じている。

 

フレンチ・コネクション/The French Connection
1971 アメリカ/公開1972
監督:ウィリアム・フリードキン
出演:ジーン・ハックマンロイ・シャイダーフェルナンド・レイ、トニー・ロビアンコ、フレデリック・ド・パスカル、マルセル・ボズフィ