シネコラム

第546回 狼たちの午後

飯島一次の『映画に溺れて』

第546回 狼たちの午後

昭和五十五年七月(1980)
大塚 大塚名画座

 

 間抜けな銀行強盗を描いた実録もの。監督が『十二人の怒れる男』のシドニー・ルメット、主演が『ゴッドファーザー』のアル・パチーノ。一九七〇年代の半ばに作られたので、アメリカン・ニューシネマの雰囲気が漂っている。
 ニューヨークにある小さな銀行の閉店間際にスーツ姿の三人の若者が入っていくが、彼らの狙いは銀行内の金庫の大金を奪うことである。が、逃亡用自動車運転を受け持つ男が気後れして逃げ出してしまう。
 銀行内に残ったソニーとサルは銃を手にしており、行員と客を人質にして、支店長を脅して金を出させようとする。
 ところが、地元の巡査部長モレッティの知るところとなり、警官隊が銀行を取り囲む。
 モレッティは電話でソニーとやりとりし、犯行をやめさせようとするが、うまくいかない。銀行には大金がなく、金を奪えないふたり組とモレッティは電話で取引し、飛行場まで車で逃がすので、人質を解放するよう説得する。
 だが、FBIのベテラン捜査官が現れ、ソニーとサルは窮地に追い込まれる。
 実際に起きた強盗事件を題材にしており、ソニー役のアル・パチーノは実在の犯人にそっくりだったという。巡査部長モレッティ役のチャールズ・ダーニングは喜劇調で演じており、『スティング』の悪徳刑事や『メル・ブルックス大脱走』のゲシュタポ、エアハルト大佐に通じる。サル役のジョン・カザールは、俳優として運が向いてきたのに、この映画の次回作『ディアハンター』に出演中、病死する。
 日本での封切りは一九七六年だが、私は四年後の一九八〇年に大塚名画座で観ることができた。あの当時はまだビデオもインターネットも普及しておらず、数年前の映画を二本立てで上映してくれる名画座が東京中にたくさんあるいい時代だったのだ。

狼たちの午後/Dog Day Afternoon
1975 アメリカ/公開1976
監督:シドニー・ルメット
出演:アル・パチーノジョン・カザールクリス・サランドンチャールズ・ダーニング、ジェームズ・ブロデリック、ランス・ヘンリクセン、サリー・ボイヤー、ペネロープ・アレン、スーザン・ペレッツ、キャロル・ケイン

 

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