第540回 レディ・イヴ
平成六年五月(1994)
銀座 テアトル西友
大恐慌と禁酒法時代の後、ナチスによる軍事侵略が始まり、第二次大戦に発展する。ちょうどその頃のアメリカ映画は日本ではなかなか公開されなかったが、コメディの大家プレストン・スタージェスの戦前の未公開作品が続けて上映されたのが、一九九四年、銀座のテアトル西友であった。
アメリカらしいシチュエーション喜劇である『レディ・イヴ』は詐欺師映画であり、ハリントン大佐と娘のジーンは豪華客船でポーカー賭博を開く詐欺師親子で、カモに選ばれたのが金持ちのチャーリーだった。チャーリーは大手エール会社の社長の息子だが、家業に興味がなく、蛇マニアの冒険家であり、南米を旅している途中、詐欺師親子の乗る船にたまたま乗船してしまう。
ジーンはチャーリーを誘惑し、チャーリーも彼女を好きになるが、詐欺師の正体がばれて、彼女を捨てる。
腹の虫が収まらないジーンはアメリカに滞在中の英国貴族という触れ込みのイカサマ師に頼んで、レディ・イヴという貴婦人になりすまし、チャーリーの家に乗り込んで来る。
チャーリーは彼女が船上の女賭博師と瓜二つなので驚くが、同一人物とは気づかず、求婚し、とうとう結婚してしまう。ところが、新婚旅行の車中で彼女が嘘の恋愛遍歴を延々と告白するので、たまらなくなって、ひとり逃げ帰る。
そして、また豪華客船で賭博師親子に再会し、やはり彼女を愛していたことを思い知るが、もちろん、彼は賭博師のジーンがレディ・イヴだとは気がつかない。
ジーンを演じるバーバラ・スタンウィックはビリー・ワイルダー監督の『深夜の告白』にも出演、一九六〇年代にはTV西部劇『バークレー牧場』の女牧場主役だったのでよく覚えている。あの頃はもう六十歳前後だったが、それでも美しかった。
ビールとエールの違いをくどくど説明するエール会社の御曹司、あまり賢いと思えないチャーリーが若きヘンリー・フォンダ。フォンダの喜劇は珍しいが、私は好きだ。
レディ・イヴ/The Lady Eve
1941 アメリカ/公開1994
監督:プレストン・スタージェス
出演:バーバラ・スタンウィック、ヘンリー・フォンダ、ウィリアム・デマレスト、チャールズ・コバーン、ユージン・ポーレット、ジャネット・ビーチャー