第538回 ナイトメア・アリー
令和四年三月(2022)
立川 TOHOシネマズ立川立飛
ナチスがポーランドに侵攻した一九三九年、アメリカでは大恐慌の影響で失業者が溢れ、禁酒法のせいで酒にも不自由していた。
無職の浮浪者スタンはたまたまカーニバルに紛れ込む。そこでは生きた鶏をむしゃむしゃ食う獣人ギークが見世物になっていたが、逃亡した獣人を取り押さえたおかげで、スタンは座長のクレムに気に入られ、一座に雑用係として加わる。
獣人の正体は酒浸りで理性を無くした浮浪者のなれの果てだった。
スタンは読心術夫妻に取り入り、トリックを習得する。やがてカーニバルの電気発光少女モリ―と恋仲になり、彼女を口説いて駆け落ちし、都会でモリーを助手に読心術を披露し名声を得る。
華やかなショービジネスの世界で成功したスタンとモリーの間に女性心理学者リッター博士が割り込み、彼のトリックを利用し、権力者に紹介して死者との交信を実現させる。
欲をかいたスタンはおかげで恋人モリーを失い、多額の報酬もリッターに騙し取られ、最後はどん底に落ち込む。そして酒浸りで理性を無くしたスタンの行く末はカーニバルの見世物小屋だった。
原作はウィリアム・リンゼイ・グレシャムの一九四〇年前後のパルプフィクションであり、一九四七年にタイロン・パワー主演で『悪魔の往く町』として映画化されており、今回のギレルモ・デル・トロ監督作品は二回目の映画化で、一九三二年の『怪物團/フリークス』を思わせる。
主演はブラッドリー・クーパー、リッター博士がケイト・ブランシェット、モリーがルーニー・マーラ、座長がウィレム・デフォー、読心術夫婦がトニ・コレットとデヴィッド・ストラザーン。渋い配役である。
ナイトメア・アリー/Nightmare Alley
2021 アメリカ/公開2022
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:ブラッドリー・クーパー、ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ、トニ・コレット、ウィレム・デフォー、リチャード・ジェンキンス、ロン・パールマン、デヴィッド・ストラザーン、メアリー・スティーンバージェン